箱学

□一目惚れ
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なんだったんだろう...

雪乃は混乱する頭で先ほどの出来事を思い返した。

「好き」

そう言う女の子の声

ばさっと何かが落ちる音

そして、目に移ったのは女子を抱きしめている真波くんの姿

あんな狭い資料室で何をしていたの?

やっぱり遊びだった?

でも真波くんはそんな人じゃない。

そうだよね?


雪乃は人目につかない場所まで来ると、膝を抱えて座り込み、ぎゅっと苦しい胸を押さえて泣いた。

いや...

真波くんが他の女の子の隣で笑ってるのなんて見たくないよ

好き、好きなの、真波くん


「だけど...あの子の告白を受けたんだったら、もう遅いよね...」

雪乃は真波への気持ちが溢れないように心の蓋をそっと閉じたのだった。

それから一体どれくらいの時間が経ったのだろうか。

気がついたら夕方だった。

「やっちゃった.....」

授業をサボって昼寝

雪乃は慌てて教室に戻ってカバンを手にいそいで帰宅するのだった。

その後ろ姿を真波が見ていたとも知らずに。



翌朝、登校してすぐに何故か雪乃は真波に空き教室へと連れてこられた。

「ねぇ雪乃さん」

「なに?どうしたの?」

雪乃は戸惑いながら真波を見上げた

「昨日、遅くまで何してたの?」

「え?」

「放課後、遅くまで残ってたでしょう?

委員会とかも無かったよ?」

「え....」

雪乃は戸惑った。

真波くんと女の子が抱き合ってたの見てショックで泣いてたなんて...言えない

「ぼーっとしてたら随分時間経っちゃってて......それだけよ?」

「うそ。俺、嘘ってわかるんですよ?」

「真波くん...」

「誰といたんですか?」

「え?」

「俺じゃなくて、誰か違う男の人といたんじゃないの?

雪乃さん?」

「なんでそうなるの?」

「だってすごく慌ててたし。

そういうことしてたんじゃないの?」

「そういうことって.....」

「こういうこととか?」

そう言って不敵に笑った真波は雪乃を壁に押さえつけて、チュッと唇と唇をくっつけた。

「ま、まなみ....くん⁉

やっ...なに、して」

なおも止まらない口付けに雪乃は、いやいやと涙を流した

「な、なんで?真波くん...」

床にヘタリと座り込んで涙を零す雪乃に真波はハッとした。

「ごめん、雪乃さん」

「なんで、こんなこと...」

「雪乃さんが昨日の放課後遅くに慌てて走ってくのが見えたんです。

服もなんか乱れてて...てっきり」

「てっきり?」

「誰かと今みたいなことしてたんじゃないかって....」

シュンとした真波に、雪乃はクスクスっと笑いを零した。

「違うよ、本当は....

泣いてて気づいたら眠ってて、それで慌てて帰ったの。

なりふり構わないで走ってたから、制服ぐちゃぐちゃになっちゃってたんだね」

「そっか.....」

真波はホッとした顔をしてから

「それで、なんで雪乃さんは泣いていたの?」

と聞いてほしくないところをさらりと尋ねてくる真波。

「......真波くん、彼女できた?」

「え?」

「昨日、見ちゃったの...

資料室で女の子に告白されて、抱きしめてるところ...」

真波は一瞬考えてから

「それ、勘違いですよ」

ってニコリと微笑んだ。

「あの時、断ろうとしたら、棚の上から資料が落ちてきて、彼女を庇ったんです。

それで、その後に好きな人がいるからって断りましたよ?」

「え?庇った、だけ....?」

「当たり前じゃないですか。

雪乃さんに告白しておいて、他の子の告白受けるわけないでしょう?」

そう言って真波は笑ってから

「それで雪乃さん、告白の返事は?」

ってニコニコしながら聞く真波に
雪乃は顔が熱くなった。

嫉妬したのがバレている...

「ま、待つんじゃ、無かったの?」

「うーん、だって雪乃さんが可愛いから、気が変わりました」

なんてさらりと笑顔で言う真波に
雪乃が更に顔をあかくすれば

「ほら、また赤くなって可愛い」

そう言って真波は雪乃の頬に手を添えた

「嫌だったらさっきみたいに拒否してくださいね?」

言った直後、真波は雪乃に優しく触れるだけのキスを落とした。






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