箱学
□一目惚れ
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「それで雪乃さん。
さっきは東堂さんと何話してたの?」
「え?」
「手、握られてたし....
告白とか、されたのかなって」
「えっ⁉まさか、違うよ」
「本当に?」
「うん、真波くんの話をしてただけ」
「俺?」
「うん、東堂先輩、真波くんを心配してたよ」
「そっかぁ...あとで謝らなくちゃ」
ハハッっと笑った真波は雪乃に向き直って
「雪乃さん、俺、待つって言ったけど。返事欲しいな...なんて」
口調は軽いのに目は真剣で、雪乃は息を飲んだ。
「真波くん、私...」
雪乃が意を決して口を開きかけた時、真波の声が雪乃の耳に届いた
「ごめん。やっぱりいいや。
俺、待つって言ったんだし」
「えっ...」
「ごめんね、雪乃さん」
それだけ言って、真波は足早に立ち去ってしまった。
雪乃はその場にストンと腰を落とした。
「.........なによ、好きって、言おうと思ったのに..」
雪乃は緊張が解けて、涙を零した。
次に会ったら気持ちを伝えようと雪乃はそう決意した。
けれど翌日、真波と女子が抱き合っている場を目撃してしまい、
あっさりとその心は揺らいでしまうのだった。
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