箱学

□一目惚れ
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雪乃は仕方なく自転車競技部のの練習を観に行くために、
真波に指定された上り坂の上の方で、彼が来るのを待っていた。

同じように待っている子たちは、あの東堂先輩のファンの子たちらしい。

「来たわ」

「東堂さま〜」

そう彼女たちの騒ぐ先を雪乃が見やれば、音もなく登ってくる東堂とそれを追いかける真波の姿が映った。

「..........」

雪乃はぼーっと真波の姿を見送った。

「なに、あれ...」

いつものニコニコした彼の雰囲気とは全く違くて、雪乃はまたドキッと跳ねた心臓に首を振って誤魔化したのだった。


真波に練習終わるまで待ってほしいと言われていた雪乃は、これが最後だからとしぶしぶ了承して、部室棟の近くのベンチに腰掛けて待っていた。

「雪乃さん、お待たせしました」

そう言った彼はやはりニコニコ顔で、さっきのあの真剣な顔の彼は夢だったんじゃ無いかと思うほどだった。

「雪乃さん。

俺、やっぱり雪乃さんが好きです。

諦めるなんて無理だから、付き合ってほしいです」

そうもう一度告白してくる真波に

「出来ないよ...」

とやはり断る雪乃。

「自転車に乗ってる俺、かっこよかったでしょ?」

「そんな、こと....」

「雪乃さんが俺に見惚れてたの見ましたよ。

どうしてそんなに俺を拒否するんですか?」

真波の言葉に、雪乃は誤魔化していたものが形になってしまい、
雪乃は仕方なく話し始めた。

「私ね、中学3年の時、彼氏がいたの」

そう話し始めた雪乃に驚いた顔をする真波だったが

「そうなんですね」

と言いながら雪乃の横に腰掛けた。

「最初は断ったの。

でもしつこくてね、それが真剣で誠実にみえたから...お付き合いすることにしたんだ。

その後も順調だと思ってたの、3ヶ月になる日のデートで、私が彼のキスを拒むまでは」

「....ゆっくりで、いいですよ」

「うん、...。

それでね、キスを拒んだらこう言われたの

“何、キスもダメなの?
あーあ、これで俺の負けか...今日で3ヶ月だもんな?”って。

それで軽く、“じゃ、別れよっか”って、そう彼は言ったのよ。

それで私、彼の特別じゃなかったんだって、すごく悲しかったし、傷ついた」

一旦区切った雪乃は呼吸を整えて話し始めた。

「それだけなら、良かったんだけどね....

たまたま聞いちゃったの。

振られた後、彼が放課後の教室で友達と話してたのを」






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