箱学

□一目惚れ
4ページ/12ページ


後日、本当に真波山岳は雪乃のクラスに訪れた。

「篠宮さんに男の客...」

「1年かよ...」

「えー、でもイケメンでお似合いだよ?」

「篠宮さんは俺たちの癒しなのに!」

「あ、あの子、噂の真波くんじゃない?」

「あぁ、自転車競技部の!」

「篠宮さんは可愛い系が好きなのか....」

とかなんとか言っている男子や女子に雪乃はため息をついた。

「ごめんね、真波くん」

教室を出ようと促す前に雪乃が謝ればキョトンとした様子の真波

「え?なにがですか?」

「いや、付き合ってもいないしそんな仲じゃないのに、ああいうこと言われて嫌でしょ?」

そう言ってから、とりあえず廊下に出よう、そう言おうとした雪乃の耳に

「いえ、むしろ嬉しいですけど。
雪乃さんのこと好きなので」

という爆弾発言が聞こえてきて、クラス中にも聞こえたのだろう。

囃し立てる人や興奮する女子たちでクラスはいっそう騒がしくなった。

雪乃はいたたまれなくなって、真波の腕を引いて人気のない場所までやってきた。


「雪乃さん?」

「な、なに...さっきの。」

「何って、そのままの意味ですよ。

桜の木下で会った時に一目惚れしましちゃいました」

だから雪乃さん、付き合ってください

と、そうニコニコ顔で言う真波に

「そ、そんなの、信じられない...!」

と雪乃は叫んだ。

「だから、真波くんと付き合うとか、無いよ」

「どうしてです?
俺、本気ですよ」

食い下がる真波に、雪乃の過去の傷が痛んだ。

「とにかく、無理...」

そう絞り出した雪乃に

「じゃあ、せめて俺の走ってるとこ見に来てください」

そういう真波は少し落ち込んでいるように見えて雪乃は、わかったと小さく呟いて教室に戻るのだった。

雪乃が去った後、手に残ったお礼の品を見つめながら

「諦めたわけじゃ無いですからね、雪乃さん」

と真波はニコリと笑って言ったのだった。






.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ