箱学
□真波
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大好きだから
寮の自室
部活がオフの今日は真波くんがこっそりと遊びにきているのだけど..
さっきからずっと、座って後ろから抱きしめられているこの状況
「真波くん?どうかしたの?」
「うん?どうかって、なにが?」
「だってなんか、今日はやけにくっ付いてくるから」
「なんで?雪乃さんは俺の彼女でしょう?」
その問いにコクリと頷けば
「なら問題ないよね」
とにこりと笑う真波くん。
「でも、いつもはそんなことないし、どうしたのかなって」
「それは雪乃さんが好きだから、こうやって抱きしめていたくなることだってあるよ」
平然と言ってのける真波に、雪乃は赤面した。
「ふふ、かわいいな、雪乃さんは」
「もう」
頬を膨らませて抗議しても、それは真波にとってはただただ可愛いだけで、ちっとも効果はなかった。
「ねぇ雪乃さん」
急に改まった感じの声で呼びかけてくる真波に雪乃はどうしたのかと少し振り向いた。
そこにはやはり真剣な目の真波がいて、雪乃は何を言われるのかとドキドキした。
「俺、自分で言うのもなんだけど、いつもロードばっかりで..
雪乃さんは寂しかったりとかしないのかなって」
雪乃は少し考えてから
「それ、私とロードとどっちが大事って聞いた方がいい?」
その返答は予想していなかったのか、真波は苦笑いで
「聞かれても答えられる自信がないや」
「そうだよね」
雪乃はクスリと笑ってから
「真波くん、私だって、デートとかこうやってゆっくり会える日って少ないから、もっと一緒に過ごしたいなって思うことはあるよ?」
でもね、と雪乃は続けた。
「私、こうやって二人でいる時の真波くんも好きだけど、ロードをやっている真波くんも大好きだから」
そう言って微笑んで
「だから、少し寂しい時もあるけどそれでも、真波くんがいつも私のこと想っててくれてるの知ってるし、不満とかそういうのは無いよ」
そう返せば
「そっか」
と、どこか安心したような寂しそうな顔をして微笑む真波に
「いつも大事にしてくれてありがとう、山岳」
「雪乃さん...」
幸せそうな顔で言う雪乃に、真波は愛おしさが溢れた。
そうしておもむろに雪乃に口付けて
「こんな俺の側にいてくれてありがとうございます。雪乃さん」
そう言った真波は、雪乃をそっと抱きしめて
「俺.....雪乃さんとこの先もずっと一緒に生きていきたいんだけど、いいですよね?」
そう耳元で囁く問いは、問いというよりも、最早決定事項で、
雪乃は
「嬉しい」
そう一言だけ返して、自分からもぎゅっと真波に抱きついたのだった。
その後も真波は一緒に過ごせない時間を埋めるように、雪乃にくっ付いて、時折、幸せそうに笑い、甘い言葉を降らせては雪乃を甘やかして過ごしたのだった。
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寂しいとか言わない彼女に
雪乃さん大好きな真波は
ちょっと不安になってみたりしたお話
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