箱学

□真波
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君でいっぱい



真波くん、君ってそんな子だったっけ?

たしかに自由で先輩後輩なんて関係ない感じで、割りと距離感ない感じではあったけど...

でも、でもね?

最近はほら、私にくっ付き過ぎなんじゃないかな??

「雪乃せんぱーい!
一緒にお昼食べましょう?」

「雪乃せんぱい、一緒に帰りませんか?」

もうこれは毎日言われているし、

「雪乃せんぱい、勉強教えてくださいよー」

とかも割りと週に3、4回は言われる。

「雪乃せんぱい、ねぇ聞いてます?」

「雪乃せんぱい、雪乃せんぱい」

そうやって呼びかけられたり話しかけられたりなんて日に数え切れないほどだ。

廊下で見かけたらすぐ寄って来たり、離れてるとこだったら大きく手を振ってきたり。

もう私の日常はすっかり真波くんだらけ。

でも、今日は一回も真波くんに会わないから、どうしたのかな?ってちょっと落ち着かない。

「私、寂しいのかな?」

移動教室の途中でふと立ち止まって呟けば

「雪乃せんぱい」

と、真波くんの声。

ぐいっと手を引かれて人目につかない場所へ来ると、トンっと壁と真波くんに挟まれた。

か、壁ドン⁉

とわたわたしていると真波くんの声に呼ばれて真波くんを見上げれば、

いつものニコニコふわふわした真波くんではなくて、少し真剣な、

そう、坂を登るときの顔に似ている、そんな顔を私に向けていた。

「真波くん...?」

「ねぇ先輩。さっきのって期待してもいい?」

「さっき..?」

「寂しいって雪乃先輩言ってたでしょ?」

「う、ん」

「それ俺に会えないからって思ってもいい?」

私は素直にコクリと頷いた。

そうしたら真波くんの顔が笑顔になって

「ね、雪乃先輩?
俺のこと好きになった?」

なんて聞いてくる。

だんだんと熱をもつ頬は誤魔化せなくて、私は真波くんが好きなんだと認めざるおえなかった。

「ね、雪乃せんぱい。
俺と付き合って?」

そう言う真波くんに、コクリと頷くのが今の私の精一杯だった。






end
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