箱学

□荒北
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あと数分



「んァ?アイツ..!」

んだってんだよ、ソイツお前に気があるやつだろ⁉なに笑顔振りまいてんだヨ!

1階の渡り廊下から移動していく雪乃を追って、荒北は駆け出した。

ほらみたことか。

人気のない校舎裏で、いわゆる壁ドン状態の雪乃ちゃんは泣きそうな顔。

たくっ、しょーがねぇなァ

そう呟いて荒北は男と雪乃の間に割って入った。

「ワリィな、コイツ俺のだからちょっかい出さないでくれるゥ?」

そうちょっと睨んでやればヒィっと情けない声を出して男は逃げ出した。

たくっ、なさけねーヤツ

そう内心思ってため息をつけば
クイっと制服を引かれる感覚。

「雪乃チャンどうかしたァ?」

そう言いつつ振り返れば涙目の雪乃。

「あらきたくん....こわかったよぉ」

と、とうとう泣き出してしまう雪乃。

「うわ、ちょ....雪乃チャン⁉」

抱きつかれてパニックになったのは一瞬で、そっと背中に腕を回してトントンと叩いてやれば、しばらくして雪乃は泣き止んだ。

「あ、荒北くん....」

「なに?もういーわけ?」

「う、うん.....ありがと」

「いいケドねー、こんくらい。

けど雪乃チャン、バカ?」

と言えばまた酷く泣きそうな顔の雪乃。

「アイツ、前から雪乃チャンに気があったの。
そんなのにヘラヘラついてっちゃだめでしょォ?」

「う、ごめん...全然わかんなかった...」

「だよネー」

一瞬の沈黙の後、雪乃が唐突に

「荒北くん、さっきカッコよかった..です」

なんていうもんだから

「雪乃チャン、やっぱバカァ?
今のタイミングでんなこと言ったら勘違いされて襲われんぞ⁉」

「襲.....で、でも。
勘違いじゃなくて....あの....スキです」

とそれはもう小さな声だったが荒北の耳はバッチリ雪乃の声を拾っていて

「アァー‼もう、こっちの気も知らないで!」

と叫んだ荒北にビクっとする雪乃

「わり。俺もスキだから止まんねーかんね?」

そう言って突然のことに驚いているだろう雪乃チャンの唇を奪って

「ごちそーさま」

と言えば、案の定真っ赤な顔の雪乃チャン。

そんな雪乃チャンの顔に満足してる俺、重症だな、と荒北は思った。






(俺と雪乃チャンが付き合うまでもう後数分)
end
.
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