運命の恋

□6離れた距離
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「え?」

ポフっと倒れかけた体は、何か温かいものに包まれていてリズは何が起こったのか一瞬理解できなかった。

「リズ...すまない。

行かないでほしい」

そう頭上から声が降ってきて、リズは状況を理解した。

"リーマスに後ろから抱きしめられてる?"

「は、離してっ」

リズはバタバタともがくが、男の人の力に勝てるはずもなく、腕の中でじっと大人しくなった。

「先生は人狼だから私の気持ちに応えられないんでしょう?

...もうわかったので離してください。

謝る必要もないです」

リズは出来るだけ冷たい声を心がけて言った。

「すまない。私が臆病なだけなんだ。

君に好きという勇気もない臆病者だからリズを傷付けた...

許してほしい」

「いいんです。

人狼の中にはそう言う人もいっぱいいました。

わかってます。

だから先生、気にしなくて大丈夫ですから離してください」

「だけどこのまま離したら、リズはもう私を名前で呼ばないし、お茶にも来てくれないんだろう?」

「....その通りです」

「それは....

自分勝手だと思うけれど耐えられそうにないんだ」

「じゃあ、今までみたいにお友達みたいでいましょう?

それならいいでしょう?」

リズは胸の痛みを無視して続ける。

「私、リーマスが気持ちに応えてくれなかったら、許嫁と結婚するって決めてたの。

友達でならいられると思うの」

「許嫁....?」

「そう、両親が認めた婚約者。

私の家は純血だから許嫁くらいいてもおかしくないでしょ?」

「......」

「リーマス、素敵な恋をありがとう」

リズはそう言って力の抜けたルーピンの腕の中からスルリと抜けて、部屋を飛び出し、アニメーガスになって禁じられた森へと駆け込んだ。

そして人間の姿に戻り、一晩中泣き続けた。

"もうお終い...今度こそ本当に終わっちゃった...私の初恋..."

明け方になって黒犬がリズの横に現れた。

「シリウス....」

「どうしたんだ?

リーマスとうまくいかなかったのか?」

「うん。人狼だから応えられないって。

人狼だとわかってて好きになったのに...」

「わかってるんだろう?あいつは...」

「知ってる。

他の人狼にもそういう人はいたから。

だけど...」

そうしてリズはため息をついて

「もうリーマスを好きな気持ちにお別れするの。

リーマスにね、リーマスが気持ちに応えてくれなかったら許嫁と結婚する気だったって言っちゃったの。

今度こそお終い...」

「ならその言葉通り、私がリズをもらおう」

「シリウス...」

「リズの為に無実になるさ」

ニヤリと自信満々に笑むシリウスにリズも微笑んだ。

「ありがとう、シリウス」

「ほら、元気を出せ」

そう言ってシリウスはリズに顔を近づけて優しく口付けた。

「シ、シリウスっ....」

真っ赤になるリズを見て、シリウスは満足そうに笑ってぐしゃぐしゃっとリズの頭を撫でた。

それからリズは慌てて部屋に戻って目の腫れと格闘するのだった。







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