運命の恋

□4満月の夜と出会い
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リズはルーピンの部屋を後にして、大広間で食事をとった後、空き時間には森へ行こうと思っていた。

"何が好きか聞いておけばよかったな"

そうシリウスを思い浮かべた。

"許嫁か...."

しばらくぼーっとしていると、エリーがやってきてリズをからかった。

「おはよう、リズ。

先生の事でも考えてるの?」

「エリー、おはよう。

ううん、違う人のこと」

その答えにエリーは驚いてリズを問い詰めた。

「ちょっとリズ?

まさか心変わりなの?」

「え?そんなんじゃないよ?」

「で、でも...さっきの物思いにふけった顔は恋する乙女の顔だったわ!」

「そんなわけないよ」

笑うリズだったが、エリーは納得しなかった。

「本当に違うの?

気持ちに気づいてないだけじゃないの?」

「違うって」

リズは絶対ないよと笑って、授業の時間だと慌てて大広間を後にするのだった。

「それにしても、授業がないからってゆっくりしすぎじゃない?」

エリーを思い浮かべてリズは呟いたのだった。

午前中の授業を終わらせ、午後の空き時間。

リズは昼食の席で、持ってきたバスケットに適当に食事を詰め込んだ。

リズはウキウキした足取りで大広間を出て行くのだった。

そんなリズの様子を職員席から見ていたルーピンはなんとも言えない表情でリズの出て行った大広間の扉を見つめたのだった。

少しも気に留めてもらえないことにルーピンは気分が暗くなるのがわかった。

"もう誤魔化せないほど君の存在が大きくなってしまったみたいだ"

そんなルーピンの様子など気がつくはずもなく、リズは禁じられた森へと足を踏み入れていた。

先日会った木のところまで行くと、犬の姿でシリウスはまだそこにいた。

「よかった。まだここにいてくれて」

リズはバスケットを見せて言った。

「色々詰めてきたんですよ」

「助かる」

人の姿に戻ったらシリウスは言った。

「何が好きかわからなくて...昨日聞いておけばよかったなって朝思ったんです」

「私の好物はチキンだ」

「チキン?」

「ああ」

「じゃあ次のにはいっぱい入れてきますね」

「なあリズ。

私に敬語なんて使わなくていい」

「うん。わかったよ、シリウス」

リズは頷いた。

「それで?

リーマスとはどうなった?」

「え、何にも...。

昨日変身したルーピン先生の側でアニメーガスになって過ごしたけど特に何も....

起きたら抱きしめられてたくらいで...」

「リーマスがリズを部屋に呼んだのか?」

「え、うん。」

「あのリーマスがな。

脈アリなんじゃないのか?」

シリウスはバスケットからサンドイッチを取り出しながら言った。

「でも...そんなことないと思う。

満月の夜は苦しくて寂しいから、正体を知っててアニメーガスになれる私を呼んだだけじゃないかな?

脱狼薬も作れるし...」

リズは首を振って言った。

「リーマスは昔っから自分が人狼だからって人を遠ざけるやつだ。

そのリーマスがどんな理由にしろリズにそばにいてほしかったっていうのは十分可能性があると思うけどな」

シリウスは自信ありげに言った。

「昔のあいつならよく知っている。

私たちがいなくなってから一人だったあいつはきっと、人狼の自分を受け入れてくれるやつを無意識に求めてたはずだ。

リズは随分条件にぴったりだと私は思うがな。

試しに告白してみたらどうだ?」

シリウスの言葉にリズはとんでもないと首を横に振った。

「シリウス、そんなこと恋愛初心者の私に出来ないよ!」

「初心者って恋愛経験がないのか?」

「うん。施設を再開させたくて、勉強漬けだったから。」

シリウスはニヤリとイタズラな笑みを浮かべた。

「私が手取り足取り教えてあげようか?」

「シリウス?」

距離を縮められたリズは、少しでも動いたらシリウスとキスしてしまいそうで頬を赤らめて固まった。

「ふはっ、ははははっ。

本当に初心者なんだな」

大笑いするシリウスに、リズはハッとした

「あ、からかったのね!

シリウスの意地悪っ」

リズはポカポカとシリウスを叩いた。

「リーマスにもこうやって自然に接したらいいんじゃないか?

先生なんて呼んでたら距離も縮まらないだろ」

「.....名前で呼ぶの?」

「私の名前を呼べたんだ。できるだろう?」

「リ、リ、.....リーマスっ!

ダメっ、本人の前なんて恥ずかしくて呼べない...」

リズは顔を真っ赤にしてうずくまった。

「本当にリーマスが好きなんだな」

シリウスは優しい眼差しでリズを見つめた。

「とにかく自信を持て。

リーマスにも幸せになってもらいたいからな。

何かあれば相談に来るといい。

ここか叫びの屋敷にいるつもりだ。」

「ありがとう、シリウス」

リズは笑顔でお礼を言って

「私はシリウスの手伝いをしなくてもいいの?」

「リズは気にしなくていい」

「だけど...」

リズは心配そうに呟いた。

「大丈夫だ」

「じゃあ何かできることがあったら言ってね?」

「ああ。

さあ、そろそろ戻った方がいい」

「うん、じゃあまた食べ物持ってくるね」

リズはそう言ってホグワーツ城へと戻って行くのだった。






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