運命の恋

□4満月の夜と出会い
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ノックをすれば、すぐにルーピンが顔を出した。

「リズか。

セブルスかと思ったんだけどね」

ルーピンは苦笑した。

部屋に入り、リズは薬を差し出した。

「スネイプ先生の代わりです...」

「そうか...ありがとう」

なんとも言えない顔で薬を差し出すリズを見て、ルーピンは苦笑した。

ルーピンはリズの見ているまえで薬を飲み干して、相変わらず不味いねと微笑んだ。

「........」

「........」

少しの沈黙が流れて、先に言葉を紡いだのはリズだった。

「先生、ごめんなさい」

「どうして謝るんだい?」

「先生の秘密を知っているから...」

リズは苦しそうに言った。

「セブルスに聞いたのかい?」

リズは首を横に振った。

「そうか...。

最初に会った時に思ったよ。

クロフォード家の子なら私の秘密に気がつくだろうってね」

ルーピンはため息まじりに言った。

「いつ、気がついたんだい?」

「ボガートの授業の時に確信しました。

授業の前にスネイプ先生に何の調合か聞いたんです。

予習をしたいと。

そうしたらその必要はないんじゃないかって...

もう知識があるだろうっていうような事を言われて....それで....

それじゃあ服用者はルーピン先生しかいないって....」

「そうか。それであの時様子がおかしかったんだね?」

リズは頷いた。

「だけど謝る必要なんてないんじゃないかい?

誰かに話してしまったのかい?」

リズは首を横に振った。

「先生は...こんな形で自分の秘密を他人に知られるのが嫌だろうって思ったんです。

だから、ごめんなさい」

リズは俯いた。

「リズ、顔を上げて」

ルーピンの優しい声にリズはそっと顔を上げた。

「!

リズ、謝る事はない。

気がつくのは仕方のないことだ。

他の生徒も気がつく者もいるだろう。

さ、涙を拭いてこっちに座って」

ルーピンは涙を流すリズをそっとソファーに座らせた。

「紅茶を入れよう。

紅茶は飲めるかい?」

頷いたリズを見て、ルーピンは紅茶を淹れ始めた。

「さあ、落ち着くから飲みなさい」

リズはルーピンからカップを受け取り、一口飲んだ。

「美味しいです」

「それはよかった」

「私、先生はクロフォード家のしてきたことをよく思ってないんだと思ってました。」

「どうしてだい?」

「最初に名乗った時に変な反応だったから。

でも、ただ正体がばれるのを危惧しただけだったんですね」

リズの言葉にルーピンは言葉に詰まった。

それだけではないんだと告げてしまいたかった。

けれどルーピンにその勇気はなかった。

「リズは私が怖くないのかい?」

「怖くないです。

人狼を怖いと思った事は一度もありません」

リズの言葉にルーピンは震えた。

怖がらなかったのは彼等以外には久しぶりだったからだ。

「リズ、よかったら....」

言いかけてルーピンは止めた。

"怖くないと言っただけだ。
憎んでいないとは言っていない..."

「ルーピン先生?」

「いや、なんでもない」

「そうですか?

あの、薬の味はいつも通りでしたか?」

「あ、ああ。いつも通り苦かった..」

思い出してルーピンは顔をしかめた。

「そうですか。よかった...

今日のはほとんど私が作ったんです」

「そうだったのか。ありがとう」

「満月は明日ですね。

先生は寂しくないですか?」

そのリズの問いに素直に寂しいと言いそうになったルーピンは曖昧に微笑んだ。

リズは立ち上がり、ドアに向かいながら言った。

「寂しかったら呼んでください。

私、去年、アニメーガスの試験をクリアしてるんです。」

微笑んで、リズはルーピンの部屋を出るのだった。








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