一途な恋を黒犬と

□8ホグズミードと間違った噂
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ハリーとシリウスをハニーデュークスまで送るも、マリアは心配だった。

ハリーも上の空だったし、シリウスも...。

けれど急いでホグワーツに帰り、近くで待っていれば、二人は無事に帰ってきた。

「ハリー、お帰りなさい。

少し話をしましょう?」

マリアはすぐにハリーに声をかけたが、

「ごめんなさい...今は...」

それだけ言ってマリアの前を通り過ぎた。

「ハリー....。

私の言葉を思い出してくれたらいいんだけど...」

マリアは悲しそうにハリーを見送り、スナッフルズを連れて大広間へと向かった。

食後、マリアはハグリッドに見回りの交代をお願いして、自室に籠もった。

シリウスの事も心配だったのだ。

「シリウス?」

マリアはスナッフルズのままのシリウスに呼びかけた。

「シリウス、話をしよう?」

マリアが呼びかけると、シリウスはやっと元の姿に戻った。

「シリウス、大丈夫?」

「ああ。覚悟してたさ」

「皆、ピーターの作戦通りってことよね....」

マリアは悔しそうに言った。

「シリウスは何にも悪くないのに。

ああいう話を聞くと我慢できないよ」

「マリアがわかってくれてればいいさ。

そうやって俺のために怒ってくれる。

それだけで充分だ」

シリウスはハハッと乾いた笑い声をあげた。

「よくないもん!

シリウスは冤罪でずっと暗いとこにいたんだから...。

早く、早くどうにかしてあげたいのに....ごめんね」

そう言って泣き出してしまうマリアを見て
シリウスは柔らかく微笑んだ。

「マリアが泣いてどうするんだよ」

「だって....シリウスが泣かないから」

そう言ってマリアはシリウスの胸に飛び込んで泣き続けた。

「シリウスっ....グスっ.......ヒック」

「マリア、ありがとうな」

マリアの背中をさすって、シリウスはそう呟いた。

マリアが側にいる。

ただそれだけでああも沈んでいた心が落ち着いて、シリウスはマリアがただただ愛おしいと、そう感じていた。




その頃ハリーは、どうして誰も両親が親友の裏切りで死んだと教えてくれなかったのかと考えていた。

ダンブルドアもハグリッドもウィーズリー氏も。

けれどハリーはふとマリアの事を思い出した。

"マリア先生は聞きたければ話すと言っていた..."

ハリーはマリアに聞こうと思い至ったが、もう明日にしようとベッドに入ろうとした。

けれど気になって、ハグリッドにもらったアルバムを開いて両親の結婚式の写真を見た。

指名手配の写真とは違い、ハンサムで溢れるような笑顔のシリウス・ブラックを見つけてハリーは考えた。

"この時にはもうヴォルデモートと手を組んでいたのだろうか..."

"だけど、この人はディメンターの影響を受けない!

母さんの悲鳴を聞かずにすむんだ!"

ぴしゃりとアルバムを閉じたハリーは激しい憎しみを感じていた。

"父さんは親友だと思ってたのに!"






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