一途な恋を黒犬と

□7壊れた箒
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授業が終わり、リーマスはハリーを呼び止めた。

「ハリー、ちょっと残ってくれないか。話があるんだ」

リーマスはヒンキーパンクの箱に布をかけてから机の方に戻って言った。

「試合のことを聞いたよ」

マリアとスナッフルズは壁にもたれたまま、耳を傾けた。

「箒は残念だったね。修理することはできないのかい?」

「あの木が粉々にしてしまって....」

「そうか...暴れ柳相手じゃ箒などひとたまりも無いだろうね」

そうリーマスがため息をついた。

少し責任を感じたのだろうか。

あれはリーマスの為に植えられた木だから...。

そんなことを思うマリアだった。

ハリーはおずおずと口を開いた。

「ディメンターのこともお聞きになりましたか?」

「ああ聞いたよ。

ダンブルドア校長があんなに怒ったのは誰も見たことが無いと思うね。

ディメンター達は校内に入れないことに腹を立てていたね。

たぶん君は連中が原因で落ちたんだろうね」

「はい.....

いったいどうして?

どうして僕だけが...

僕が...」

「弱いとかそういうことじゃないのよ」

マリアは会話に割って入った。

「マリア先生。じゃあどうして」

「前にも言ったけれど、ハリー、あなたが誰も経験したことのない恐怖を知っているからよ。

だから誰よりも影響を受けるの」

言葉を受け取ってリーマスが続けた。

「ディメンターは地上を歩く生物の中でももっとも忌まわしい生物のひとつだ。

凋落と絶望の中に栄え、平和や希望、幸福を周りの空気から吸い取ってしまう。

マグルでさえディメンターの姿は見れなくともその存在を感じ取る。

ディメンターに近づきすぎると、楽しい気分も幸福な思い出も、一欠片も残さず吸い取られてしまう。

やろうと思えばディメンターと同じ状態にしてしまうことが出来る−−

邪悪な魂の抜け殻にね。

心に最悪の経験しか残らない状態だ。」

リーマスの言葉に、スナッフルズがマリアの足元にすり寄ってきた。

マリアはスナッフルズを撫でて、リーマスの代わりに口を開いた。

「ハリー、あなたの最悪の経験は酷く辛いものよ。

同じ経験があれば、誰だってハリーと同じ状態になる。

私やリーマスだってそう。

だから少しも恥じたりする事はないわ」


「あいつらが側に来るとーー」

ハリーは声を詰まらせた

「ヴォルデモートが母さんを殺した時の声が聞こえるんです」

リーマスはハリーの肩を掴もうとして躊躇いやめた。

マリアはリリーの最期を想い泣きそうになった。

そんな中、スナッフルズの姿のシリウスが名付け親らしくハリーにそっと寄り添った。

ハリーはスナッフルズを撫でて、悔しそうに言った。

「どうしてあいつらは試合に来なければならなかったんですか?」

「飢えてきたんだ。

ダンブルドアがやつらを校内に入れなかった為に、餌食にする人間という獲物が枯渇してしまった。

クィディッチの興奮や感情の高まりはご馳走だったんだろう」

リーマスの言葉にハリーは言った

「アズカバンは酷いところでしょうね」

マリアはスナッフルズを呼び、抱きしめた。

「海のかなたの孤島に立つ要塞だ」

リーマスは暗い顔で続けた

「囚人を閉じ込めておくにはいい場所だ。皆自分の心の中に閉じ込められているんだから。

数週間も入れておけば、ほとんどみな気が狂う」

「でも、シリウス・ブラックはあいつらの手を逃れました。

脱獄を....」

「たしかに

ブラックはやつらと戦う方法を見つけたに違いない....

そんなことが出来るとは思わなかった」

そう言ってリーマスはちらりとマリアの腕の中にいるスナッフルズを見た。

そんなリーマスにマリアは苦笑してリーマスに言った。

「ほらリーマス、ハリーに教えてあげてよ。パトローナスを。」

その言葉にハリーはハッとして慌てて

「教えてくださいませんか?」

そうリーマスに言った。

「....わかった。休暇明から始めよう」

「ありがとうございます!」

そう喜ぶハリーを見て、マリアは微笑んだ。

「マリア、僕が教えられない時は君に頼むよ?」

「えぇ⁉でもほら、私教えるの下手だし?見回りもあるし.....」

そう突然自分にも降りかかった火の粉にマリアは慌てた。

「ハリーの為だよ、マリア?」

そう笑顔で言うリーマスはしてやったりという顔だ。

「リーマスが黒い...やっぱり何にも変わってない....」

マリアは小さな声でブツブツ文句を言った。

「いいよね、マリア?」

「わかりましたー!」

マリアはやけ気味に叫んだ。






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