一途な恋を黒犬と

□4再会と新しい授業
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「学生時代に?」
そうシリウスが聞いた
「そうなの。マクゴナガル先生が特別にって5年生の時よ」
「飛行訓練以外は得意だったもんな」
箒は壊滅的だが、とシリウスは笑った。
「しょうがないよ。箒だけはどうしても駄目だったんだもん」
「俺やジェームズが教えても上達しなかったもんな。
それで、マリアのアニメーガスは一体なんなんだ?」
「私ね、昼と夜で違うの....。
試験とかは皆昼間でしょう?だから登録されてるのは昼間の姿でね、フェネックなの」
「昼と夜で違うなんて史上初じゃないか?」
とシリウスは驚いた。
「そうなの。登録してから、試しにと夜変身したら....姿が違くて。
私、慌てて変身を解いてダンブルドア先生の所に行ったのよ」
そうしたらね、と一旦言葉を切ってマリアが続けた。
「ダンブルドア先生も驚いていらっしゃったんだけど...このことは秘密にしようって。
だから私の夜のアニメーガスは未登録なの」
「その頃じゃあ公表することで危険に晒されると思ったんだろうな」
「そっか、情勢が不安定だったもんね」
そう頷くマリアにシリウスは問いかけた。
「それで、昼間はフェネックで夜は何だったんだ?」
「小さめサイズのユキヒョウだよ。
シリウスが変身した時の黒犬と同じくらいの大きさなの。
実際は胴体と尻尾で2mくらいあるんだけどね。」
「へぇ。でもどっちもマリアらしいな」
「シリウスこそ」
そう言って二人はクスクスと笑い合った。
そしてシリウスはふと真剣な眼差しでマリアを見つめた。
「マリア、何か隠してることがあるだろう」
「えっと...そんな事はないけど」
そう答えるものの、明らかに動揺するマリアを見てシリウスは問い詰めた。
「マリア。ちゃんと話してくれ」
マリアは根負けして話し始めた
「うぅ...。
あのね、ハグリッドの魔法生物飼育学の手伝いがあったの。
今日はヒッポグリフだったんだけど、ルシウス・マルフォイの息子のドラコ・マルフォイが注意事項聞いてなくてね。
ヒッポグリフを侮辱したのよ」
「ルシウスの子供がやりそうなことだ」
その言葉にマリアも頷いて続けた
「相手してたヒッポグリフ、バックビークっていうんだけど、その子の様子が変だなって思った時に、マルフォイがバックビークを侮辱しそうな会話が聞こえたから慌てて間に入ったら、怪我しちゃったの。
結局庇いきれなくてマルフォイも怪我したんだけどね。
怪我したって知ったらシリウス怒りそうだったから言いたくなかったの」
「当たり前だろう!好きな奴を心配しないわけがない。
それで、怪我の具合はどうなんだ?」
そう言って心配そうにするシリウス
「大丈夫だよ。
自分で応急処置もしたし、マダム・ポンフリーの所にも行ったから。傷も残らないって。」
「そうか....頼むから無茶はするな。
今の俺は、傍にいてマリアを守ってやれない...」
大きく息をついて、それから今の自身の無力さにシリウスは項垂れた。
「シリウス.....心配かけてごめんなさい」
そう言ってマリアはぎゅっとシリウスを抱きしめて、
俯いたままのシリウスの顔を覗き込んで
チュッっと触れるだけの口付けをしたのだった。
予想外のマリアの行動にシリウスがびっくりして顔を上げれば、
イタズラ成功とでも言いたげな顔をしたマリアがシリウスに笑いかけるのだった。
「ふふっ、シリウス顔赤いよ?」
「そんなことないだろ」
照れたシリウスはふいっと顔を背けた。
そんなシリウスにクスクスと笑っていたマリアだったが、ふと時計を見て慌てた。
「大変っ、もうこんな時間!?」
「なんだ、もう帰るのか?」
「うん、そうなの...ごめんね?」
そう言ってマリアはシリウスを見上げた。
「仕方ない、からな...」
「ごめん......。
えっと....食料は多めに持ってきてあるけど、足りなかったら連絡してね。
あとは...出来るだけ近いうちにまた来るから、だから、その....シリウスも無茶はしないでね?」
「わかってる。マリアもな」
そう言ったシリウスにマリアはぎゅっと抱きしめられた。
「シリウス、好きよ」
「俺もだ」
名残惜しげにシリウスはマリアを離して、抜け道の入り口まで見送ろうとマリアに着いて行った。
「それじゃあね、シリウス」
そう言ってシリウスに背を向けたマリアをシリウスは呼び止めた
「マリア」
「どうかし.....っ」
そう振り返って言いかけたマリアの言葉はシリウスによって言うことは出来なかった。
「も、もうっ」
そう言って怒るマリアの頬は赤く染まっていた。
「ごちそうさま」
そうニヤリと笑うシリウスは、学生時代の悪戯仕掛け人の面影を思い出させるくらい、瞳をキラキラとさせてマリアを見つめていた。
「シリウス、おやすみなさい」
少しの間見惚れていたマリアはハッとして、どうにかそれだけを口にすると、ホグワーツに帰って行くのだった。





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