巻島

□巻島ss
10ページ/10ページ

大胆に



「ね、裕介くん」

そう聞きなれない呼び方で唐突に呼ばれた俺は固まった。

「ゆうすけくん」

「なん、っショ....」

現在部活も終わり、皆んな帰宅した。

オレは部室に残って、グラビアを眺めていたのだが....

なぜか篠宮も残っていて急に名前を呼ばれた。

「グラビア、面白い?」

「当たり前、っショ?」

面白くないなら趣味にはしない

「目の前の女子より面白い?」

「は...?」

意味がわからなくて間抜けな声が口から出た。

それに気分を悪くしたのか、篠宮がムッとした顔をする。

「裕介くん」

そうまた名前を呼ばれて、篠宮を見つめれば、急に近づく篠宮とオレの距離。

「なっ......」

ベンチに腰掛けていたオレの膝の上に跨って、至近距離でオレを挑戦的な目で見つめてくる篠宮。

「な、なんっショ.......」

「裕介くんが...好き」

予想外の言葉で固まるオレに篠宮はなおも続けた

「裕介くんは、私よりグラビアの方が好き?」

そう言った篠宮はオレにぎゅっと抱きついてきた。

い、色々ヤバいっショ..

篠宮の身体の柔らかさに理性が崩壊しそうになる

「と、とりあえず離れるっショ!篠宮」

「やだ」

「やだじゃない、っショ!?」

「私のこと襲っちゃいそう?」

「そ、そうっショ!だから早くどくっショ」

そう言えば、嬉しそうに笑う篠宮。

「よかった」

「は...?」

「私ね、巻島くんに女の子として見てもらえてないんじゃないかなって思ってたから...」

だから、襲いそうって思ってくれて嬉しい。

なんて言い出す篠宮はそっとオレの膝の上から退いて、姿勢をただした。

「あのね....巻島くんのこと好きなの。

私と付き合ってくれない..かな?」

そう言った篠宮はさっきの挑戦的な目とは違って不安そうに潤んでいた。

正直篠宮が彼女に、とか考えたこともなかった。

けど、オレの膝の上に跨った篠宮の感触と重みが心地よくて、グラビアなんかに嫉妬してた篠宮を可愛いと思っちまった。

これは...オレの負けっショ。

「オレでよければ...」

と応えれば

「本当に?」

と泣きそうな声が耳に届いた

「篠宮?」

「あんなことして、軽蔑してない?」

「は...?」

オレはさっきから何回間抜けな声を出してるっショ。

「付き合ってくれるの?」

「そう、言ったっショ。

軽蔑って...どうしたっショ?」

「あの、ね。

東堂くんが..

”巻ちゃんは押せば落ちる!
押しに弱いのだ。
だからね、雪乃ちゃん。
巻ちゃんの膝に座って抱きついて告白してみたまえよ。ワッハッハ“

って....

そんなの絶対引かれるって言ったんだけど

”なに、男は所詮オオカミなのだよ、雪乃ちゃん。
巻ちゃんだってボディタッチでイチコロだ!“

とか言うからやってみたんだけど...」

「東堂........」

ハァと大きなため息をつけば、不安そうな篠宮。

「東堂の入れ知恵っていうのは癪だケドよ。当たってるつーか....。

今のがなかったら意識してなかったと思うっショ」

「そう、なの?」

やっぱり東堂くんのアドバイスは的確なんだな。

なんて東堂のことを感心する篠宮にちょっとイラッとしたオレ、心狭いっショ。

「オレといる時は、他のヤツのこと考えるなっショ、雪乃」

そう言って自分の方に向かせた篠宮に口付けるオレ。

「ごちそうさま、っショ」

「な、あ.....ま、まきしま、くん⁉」

「裕介、だろ?」

「あ.....ぅ....、ゆ、ゆ、裕介くん...」

さっきとは違って顔を真っ赤にして名前を口にする篠宮に
可愛すぎるだろ、とオレは満足して、

「雪乃の方が可愛いし面白いっショ」

そう言って笑った。





.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ