巻島

□巻島ss
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バースデー


「雨、かぁ...」

もしも今日、7月7日が晴れていたのなら、星空を一緒に見ようと巻島を誘うつもりだった。

そう、そうして巻島の誕生日の今日、彼に告白をしようと心に決めていたのに。

「ばーか」

そう誰もいない教室でつぶやいた独り言

「誰がバカ、なんショ?」

「ま、巻島⁉」

「クハっ、なんつー顔してるっショ」

「だって、今日練習ないんじゃ...
なんでまだいるの?」

「アーなんだ....忘れ物したんだよ」

「忘れ物...」

「なぁ篠宮、これから暇か?」

「え?うん」

「じゃあオレの家に寄ってかないか?

ほら、オマエが読みたがってた漫画、手に入ったからよ」

「うん、じゃあ行こうかな?」

嬉しさを隠してそう答えれば

「って、そうじゃないっショ!オレ!」

と叫ぶ巻島

「へ??」

「その、なんだ....

篠宮に誕生日祝ってもらいたいんショ」

頬をかいてそっぽを向いた巻島の耳は真っ赤で雪乃はクスリと笑った。

「わ、笑うなっショ」

「うん、ごめん。

あのね、本当は私もお祝いしたいって、そう思ってたから」

「篠宮..」

「巻島、お誕生日おめでとう。

私、巻島が好き、大好き!」

言えないと思っていた想いをぶつければ

「お、おぅ....ありがとう、っショ」

と戸惑った顔の巻島

ねぇ、私の気持ち、ちゃんと伝わってるの?

「巻島、私の好きは..」

「わかってる。友達としてだろ?

大丈夫だ、勘違いなんてしてないっショ」

あぁ、やっぱり伝わってなかった

「違う、よ。巻島のこと、好きなの」

そう言って抱きつけば慌てた巻島が私を引き剥がそうとしている。

「篠宮⁉」

「私と付き合ってください、巻島裕介くん」

そう言って見上げた巻島の顔を、私は一生忘れないと思う。

「.............」

「ねぇ、答えをちょうだい?」

驚いて固まっている巻島にいたずら心が芽生えた私は上目遣いに巻島を見上げた。

狼狽える巻島に笑みがこぼれる。

けどそんなの一瞬で覆されるのは、私が巻島を好きだからに他ならなくて。

「オレなんかでいいのかよ?

オレは、雪乃しか考えらんねぇけどな」

そう言ってから、巻島はクハっと笑った。

「顔真っ赤だぜ?」

「だ、だって...巻島が好きだから」

「知ってるよ。オレも雪乃が好きっショ」

そう言って笑った巻島はカッコよくって、この瞬間が幸せで

「巻島、お誕生日おめでとう」

私はそう心の底から、笑顔でもう一度巻島に告げたのだった。







かなり遅くなったけど、
happy birthday 巻ちゃん!

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