巻島

□巻島ss
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彼シャツ




「もう最悪....」

「こればっかりは仕方ないっショ」

「でも...だって裕介ぇ」

「今日じゃなくても、オレはいいっショ」

それより風呂に入れよ、
そう巻島に言われた雪乃は渋々と巻島家のお風呂に入った。

事の発端は、雪乃が彼氏である巻島の誕生日を祝うために7月7日の今日、金城に必死にお願いをして部活の休みをもぎ取ったことに始まる。

デートをしながら、プレゼントを一緒に選ぶ為にウィンドウショッピングをしようと言っていたのに、
学校を出て駅にたどり着く前に突然のゲリラ豪雨にあったのだ。

幸いにも巻島の家が近く、びしょ濡れになりながら二人は家に飛び込んだのだが、雪乃はプレゼントも買えずに落ち込んでいたのだった。



巻島はさっき風呂場へと見送った雪乃の姿を思い返して

「どう考えても最高だった、ショ」

と呟いた。

呟いてすぐにハッとした巻島は、頭を振ってその姿を振り払った。

制服が透けてたなんて言ったら、怒るに決まってるのが目に見えている。

「これでいいか、」

あまり着ていない、少し丈の長めのシャツを取り出して、風呂場に向かう。

着替えを置いて、自分と雪乃の制服を乾燥機に放り込んだ。

部屋に戻ってしばらくすれば、雪乃が風呂から上がって部屋にやってきた。

「ゆ、裕介....」

「ん?どうかしたのか?」

ドアを少しだけ開けた雪乃が部屋に入ってこない。

「あ、あのね...ズボンかなにかないかなって」

どうしたのかと入り口に行って雪乃の格好を見て理解した。

ワンピースに近い丈になっているもののそれでもかなり膝上で、しかもオレのシャツは胸元が開いてるのが多く...
これは、やばい、ショ。

特に何も考えていなかったが、これは
いわゆる彼シャツじゃねぇか。

「裕介、ね....お願い」

その言葉が誘っているように聞こえたオレは相当雪乃の格好にやられているようだ。

「ま、待ってろよ。
今探してくるっショ」

「うん、お願い」

ホッとした顔の雪乃、オレの顔は多分赤い。

スキニーパンツと薄手のカーディガンも渡して羽織らせた。

そこでやっと落ち着いて、オレは雪乃を部屋に入れることができた。

「ね、裕介、髪の毛濡れたままだよ?」

「あー、忘れてた」

「乾かしてあげるよ。
それともお風呂入る?」

「乾かすだけでとりあえず平気ショ」

そう答える間にも、勝手知ったるオレの部屋で雪乃はドライヤーを探し当ててオレに笑いかけていた。

「乾かしてあげるね」

「ショ」

丁寧に乾かしてくれる雪乃の指がオレの髪をすくたびに
落ち着いていたオレの心臓が暴れ始めた。

これはやっぱ、まずいっショ...

「雪乃、もういい...」

「ん?」

「もう十分ショ、サンキューな」

「そう?まだ濡れてるよ?」

「へ、平気、ショ」

そう言って雪乃からドライヤーを取り上げて元の場所に戻して雪乃の隣にストンと腰を下ろせば

「ね、裕介。
やっぱりプレゼント今日渡したい」

何かしてほしいこととか、ないかな。

そんな事を聞いてくる雪乃。

おいおい、まだオレの理性を試すのかヨ。

正直出てくる願いは、雪乃の思ってるような事じゃねぇし。

「アー、もうもらったからいいんだヨ」

と頬をかいていえば

「なにもあげてないよ?」

「いや、その..
いいもん見せてもらった、ショ」

「へ?」

キョトンとする雪乃に

「それ、彼シャツ、ショ」

と言えば

「ゆ、裕介...」

と顔を真っ赤にする雪乃。

「オレは雪乃と一緒にいれるだけで十分っショ」

そう言ってそっぽを向いたオレの頬に柔らかい感触。

ハッとして雪乃を見れば恥ずかしそうに俯いている。

雪乃からキスしてくるなんて、多分一度も、ない。

嬉しいを通り越して、今のオレには刺激が強すぎだ。

「雪乃っ.......
ヤバイ、我慢の限界、ショ」

「へ?」

「オレの理性を吹っ飛ばした雪乃が悪ぃんだからな」

「キャっ...裕介のばかー」

そう押し倒された雪乃の声が巻島の部屋に響いたのだった。





(いいプレゼント買えて良かった)
(疲れたっショ..)
後日、1日休みをもぎ取った雪乃に、巻島は買い物に連れ回されたのでした



end
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