巻島

□巻島ss
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《寝ぼけ眼》



今日は風が心地いい

部室の片付けがひと段落した雪乃は、ベンチに腰掛けて、
ふぅ、と一息ついた

まだ皆んなが戻ってくるには少し時間がある。
時計を見つめてから、少し休憩とばかりにごろりとベンチに横たわった。

テスト明け、昨夜遅くまで勉強していた雪乃がそのまま眠りに落ちるのは早かった。



それから1時間後-

巻島が1人先に部室に戻ってきた

「うぉっ⁉」

ベンチに横たわっている雪乃を見て、巻島は声を上げた

「こんなとこで寝るなっショ」

誰かに襲われでもしたらどうするんだよと巻島は内心思いながら
雪乃を軽く揺すった

「おい、起きるっショ」

「ん....」

起きる気配のない雪乃

「篠宮」

「ぁ....んっ...」

「篠宮、起きるっショ」

「んんっ....ぁ....んんぅ...」

起こすたびに少し色っぽい声を上げる雪乃に、巻島は少し焦った。

オイオイ、あいつらも帰ってきちまうだろ⁉

こんな無防備な篠宮を他のやつに見せられるか!

「篠宮、篠宮!
起きるっショ!」

強めに揺すれば、とろんとした目をした篠宮がオレを見た

「巻島、くん...」

ふにゃりと笑ったかと思うと、篠宮がオレに抱きついてきた

「なっ......な、な....篠宮⁉」

「ふふっ...巻島くん、すきー」

その緩んだ喋り方に、オレはハッとした

「篠宮?寝ぼけてんのか?」

抱きついてきている篠宮をそっと剥がして顔を見れば、とろんとした目のままで眠そうな篠宮。

「篠宮、起きろー」

「起きろだって、変な夢〜..」

「夢じゃないっショ!
篠宮、起きるっショ!」

「ふぇ...?」

やっと目の覚めた篠宮は、オレとの至近距離に目をパチクリとさせて顔を真っ赤にした。

「あ、ま、巻島くん....私....」

「盛大に寝ぼけてた、ショ」

「夢かと、思って....」

「......篠宮はオレの事、好き、なのかよ?」

オレの問いかけに顔を覆ってしまう篠宮

「私、...巻島くんに抱きついた?」

「ショ」

「わ、私....好きって、言った?」

「っショ」

肯定の意を示したオレに、篠宮は観念したのか

「巻島くんが好きです」

と消え入りそうな声で、囁いた

「オレも好きっショ」

「え?」

オレの言葉に、覆っていた手を退けて顔を上げる篠宮

「だから、オレも篠宮のこと、好きなんだよ」

「う、うそ...」

「ホントっショ、こんな小っ恥ずかしいウソつくわけ無いっショ?」

「嬉しい...」

ポツリと言った篠宮が次の瞬間オレに勢いよく抱きついてきて危うく倒れるところだった

「うわっと..」

「巻島くん、好き」

「オレも、っショ」

そう言って篠宮を抱きしめようと手を伸ばし掛けた時に部室のドアが開いて、オレも篠宮も顔を真っ赤にした。

「んあ?なんだぁ?
....あぁ!お前たちやっとかよ」

入り口にいたのは田所っちで、ニヤニヤとオレ達を見つめてくる

「待つっショ、田所っち。
やっとって....なんショ」

「何ってそりゃあ、なぁ?」

そう言って振り返った田所っちに変わって

「そりゃ、やっとくっついたかっちゅーことでないですか?」

「え!やっと巻島さんと篠宮さん、お、お付き合いを始めたんですか⁉」

続々と部室に入ってくるメンバー達が次々に「やっと」と言う言葉を言いながら入ってくる。

「まさか....オレ達が両想いなの、皆んな知ってた、っショ....?」

「そのまさか、だ。巻島に篠宮」

「随分やきもきされられましたよ」
と手嶋。

「焦れったかったですよね」
と後輩マネージャー。

篠宮を見やれば顔を真っ赤にしていて、居づらくなったオレは篠宮の手を掴んで部室の外に出た。


「巻島くん、なんか恥ずかしいね」

「ショ。
けどまぁ、隠す気も無かったし、問題ないショ」

そう言うと篠宮は途端に笑顔になって

「巻島くん、今日、一緒に帰れる?」

と問いかけてきた

「送って行くっショ」

そう答えればものすごく嬉しそうに微笑む篠宮。

そんな小さな事で喜んでくれる篠宮をオレは愛おしいと思った。






(巻島くんと、手、繋ぎたいなぁ)
視線
(手、繋ぐっショ?)
(うん!)



end
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