巻島

□巻島ss
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大事なグラビア?



「なぁ、金城に田所っち。
ここにあったグラビア知らないっショ?」

「あ?知らねぇよ」

「俺も見ていないが、無いのか?」

「あぁ。あれには大事な...」

そんな会話が部室の中から聞こえて、雪乃は慌ててドアを開けて謝った。

「ごめん、裕くん!」

「うぉっ⁉雪乃⁉

.....別に、無くなったのは雪乃のせいじゃないだろ?」

「違うの、私が...私が捨てちゃったの!」

「は?雪乃が?」

「うん....」

「なんだ篠宮。
巻島がグラビア見るの嫌だったのか?」

「そんな素振りなかったようだがな」

田所と金城も驚き、巻島も

「そうなんショ?」

と意外そうに雪乃に問いかけた。

「ち、違うよ!
裕くんのグラビアは、女の子たちがアイドルにキャーキャー言うのと同じでしょ?

そ、そりゃあ多少、嫉妬することも..あったけど」

「じゃあどうしたっていうんだ?」

と田所が巻島の代わりに問いかける。

「今日、裕くん、
クラスの女の子たちにキャーキャー言われてたでしょ?」

「んあ?あー、髪がどうとかって、煩かったっショ」

「それがなんか嫌だったの...
それでモヤモヤしちゃって...」

俯く雪乃

「思わず置いてあった巻島のグラビアを捨てたってわけか」

田所の言葉に雪乃はコクリと頷いた。

「裕くんにとって、そんなに大事なグラビアだって知らなくて...ごめんなさい」

「いや、いいんショ。
誰かに持ってかれたってわけじゃねぇんなら、問題無いっショ」

「え?」

驚いて顔を上げれば、全く怒った様子のない巻島がいて、雪乃は戸惑った。

「まぁでも、そうだな。
お詫びに、一緒にプールに行くっショ」

「え、プール?」

巻島の告げる施設名は、関東で一番大きな室内型のプールがあるレジャー施設の名前で、

「ねぇ、それ、お詫びになるの?
デート..じゃなくて?」

雪乃の問いかけに口ごもる巻島に

「篠宮、それで十分お詫びになるんだ」

何故か訳知り顔の金城に、雪乃は色々腑に落ちないながらも、プールに行く約束をしたのだった。

そのあと、雪乃は片ずけがあると部室を出て行った。

「わり、金城。助かった」

「なんだ、金城。
あんなに必死で探してた理由知ってんのか?」

「実はな」

「わー!金城、言うな!言うなよ⁉」

「うむ」

「気になるだろーがよ、巻島」

そう言って巻島に詰め寄る田所に、巻島は折れて

「あのグラビアには、雪乃の水着姿の写真が挟んであったんショ!」

そう、去年デートで海に行った時に写した雪乃の水着姿の写真が大事に挟んであったのだ。

「お前...まさか...」

「あー!そうっショ!
グラビア見てるフリして雪乃の写真見てたっショ」

そう叫んだ巻島の声は、部室に入ろうとしていた雪乃の耳にも届いていて、
雪乃は真っ赤に顔を染めてドアの前にしゃがみ込んだのだった。




(篠宮の水着姿を見たくてプールに誘ったつーわけか)
(彼女の水着姿見たいって思うのの何が悪いっショ⁉)
(いいや、悪くねーよ?なぁ金城?)
(グラビアを見るよりは健全だな)
(あーもう!ニヤニヤするんじゃねぇっショぉぉぉ!)
(もう、恥ずかしいからやめてよー)




(大事だったのはグラビアよりも雪乃の水着の写真っショ)
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