運命の恋
□4満月の夜と出会い
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リズは禁じられた森から大広間へと向かった。
あれからシリウスによるルーピン講座が開講され、リズが戻る頃には日が沈みかけていたのだ。
リズは呟いた。
「甘いもの....」
リズは思い出す。
「リーマスは昔から甘いものに目がなくて常にチョコレートを持ち歩いていたな...
普通の何倍もの甘さのお菓子も平然と美味しい美味しい言いながら食べていた」
あれだけは理解できなかったとシリウスは苦い顔をして言っていた。
ルーピン先生は相当な甘党なのだ。
「お菓子、作っていこうかな」
リズは急いで夕飯を食べると、足早に調理場へと向かった。
そして消灯ギリギリの時間にリズはルーピンの部屋の戸をノックした。
返事はない。
もう変身してしまって喋れないのかもしれない。
リズはそっとドアを開いて中に滑り込んだ。
お菓子を入り口近くに置いて、さっとアニメーガスに変身したリズは、ベッドへと静かに近づいた。
リズのアニメーガスはタマスカンドッグ、いわゆるオオカミ犬だ。
リズはそっと近づいて、掛け布団を器用にはがした。
室内に入った僅かな月光で変身したのだろう。
狼の姿をしたルーピンがそこに蹲っていたのだった。
リズは鼻先をルーピンに近づけ、頬を摺り寄せた。
嫌がるそぶりがないのは薬のおかげで自我があるからだろうかとリズは思いながら、ベッドの空いている隙間にぴょんと飛び乗った。
体を寄せるように寝転び、リズはルーピンの様子を伺った。
"苦しそう"
リズはペロペロと顔を舐めた。
その行動に驚いたのか、つぶらな瞳で見つめてくるルーピンもとい狼に、リズは嫌だったかと項垂れて、体を摺り寄せて眠る体制に入った。
それから数時間後、リズはハッとした。
気がついたら寝ていたのだ。
ルーピン先生はと視線を動かせば、目の前に人間の姿のルーピンが眠っていた。
「よかった...」
そう言って起き上がろうとしたリズは自身の姿も戻っていることに気がついた。
と、同時に何故かルーピンに抱きしめられている状況にものすごく動揺した。
「ル、ルーピン先生?」
リズは小声で呼びかけた。
「ルーピン先生っ!」
起きる気配のないルーピンに、リズはさっきよりも大きな声で呼びかけた。
すると目を覚ましたルーピンが微笑んだ。
「リズ、おはよう」
至近距離で微笑まれて、リズは顔を真っ赤にした。
「せ、先生!
う、腕を離してくださいっ」
リズの慌てぶりにルーピンは自身の状態を確認して「ああ」と呟いた。
「ルーピン先生?」
「なんだい?」
「あのっ、起きたいんですけど....」
「そうなのかい?」
至極残念そうにするルーピンに何故かリズは罪悪感に苛まれた。
「あの、まだ身体の具合が?」
「そうだね、少し怠いかな」
でも、とルーピンは続けた。
「こうしてると落ち着く」
そう言ってぎゅっとリズを抱き寄せるルーピンに、リズはルーピンの腕の中で声にならない悲鳴をあげたのだった。
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