一途な恋を黒犬と

□5旧友の授業とハリーの悩み
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「え、ここ?」

「ん?そうよ」

そう言ってマリアは軽く戸をノックしてドアを開けた。

「はーい、リーマス」

「やあマリア。
おや、ハリーも一緒かい?」

そうマリアの後ろを見たリーマスは言った。

「うん。ホグズミード行けない上に、玄関ホール付近でフィルチに捕まってたから連れてきちゃった」

てへっ、て感じで笑ったマリアは
リーマスに本日のお土産を渡して席に着いた。

「今日はねー、特製のマカロンなのですよ。

あ、私たちの分は普通のだから安心してね、ハリー」

そう入り口で呆然と立ったままのハリーにマリアは笑いかけた。

「ハリーも座って?」

「え、あ、はい」

戸惑いながらもハリーはソファに腰掛けたのを見て

「マリア、ハリーが戸惑っているようだよ」

そうリーマスは苦笑しながらマリアに言った。

「あれ、どうして?」

「あんまりにも自分の部屋のように振舞ってるからじゃないかな?」

「だって旧友のリーマス相手に遠慮とかいらないよね?」

「少しは遠慮というか先生として振る舞ったらどうだい?ハリーもいるんだから」

「うーん、無理かなぁ。
なんかね、リーマス達の前だと学生に戻ったみたいな気分になるの。

だからハリーも気にせずに、ここにいる間はロンやハーマイオニーに話すみたいに喋っていいからね」

そうとてもリラックスしたようにマリアが言うので、ハリーは曖昧に頷いた。

「そう言えばリーマス、あのグリンデローは次の教材?」

そう部屋の隅にある水槽を指差して聞いた。

「え?」

「水魔だよ、ハリー」

紅茶をハリーとマリアの前に出してリーマスは続けた。

「そう、次のクラス用の教材だ。
河童の次だから難しくはないと思ってね。」

そう言ったリーマスはキラキラと輝いた目でハリーを見て言った。

「すまないね、ティーバッグしかなくてね。けどお茶の葉はうんざりだろう?」

一瞬びっくりしたハリーだったが

「マリア先生が?」

と問いかけてマリアを見た。

「あー、うん。ごめんね」

そう少し気まずそうにマリアは謝った。

「ハリー、気にしてないだろうね?」

「気にしてないです」

ハリーは一瞬、大きな黒い犬を見たことを話そうか迷って止めた。

臆病者と思われたくなかったのだ。

が、マリアは見抜いていた。

「ハリー、心配事があるんでしょう」

「いいえ.....。

....はい、あります」

「話してみて?」

マリアがそう言うと、ハリーはおずおずと話し始めた。

「ルーピン先生の最初の授業でボガートと戦った日のことなんですが...覚えてらっしゃいますか?」

「ああ」

「もちろん」

「どうして僕に戦わせてくださらなかったのですか?

マリア先生もわざわざ止めに入ったように見えました。」

そのハリーの問いかけに

「あぁ、やっぱり。分からなかったわよね。」

マリアは納得の表情をし

「言わなくても分かると思っていたよ」

リーマスは驚いていた。

「どうしてだったんですか?」

「そうだね。
僕もマリアも、ボガートが君に立ち向かったらヴォルデモート卿になると思ったんだ」

ハリーはリーマスの答えに目を見開いた。予想しもしなかったのだろう。

「どうやら思違いだったようだけれど、あの場でヴォルデモート卿がもし現れていたら、みんなが恐怖にかられると思ったんだよ」

「確かに最初はヴォルデモートを思い浮かべたんです。

けど、僕、ディメンターのことを思い出したんです」

「そうか.....そうなのか。

いや、感心したよ。
ねえマリア?」

「そうね。ハリーが恐れているものが恐怖そのものっていうことだもんね」

「そうだ。とても賢明なことだよ」

「ということはハリー、もしかして自分にボガートと戦う力がないと私達に思われてると思ってたのね?」

「あの...はい」

「ありっこないよね、リーマス。

だってジェームズの息子よ?

戦う力が無いなんて絶対に無いもの」

マリアはクスクス笑って言った。

「リーマスとジェームズ...ハリーのお父さんは同級生だったのよ」

少し不思議そうにするハリーにマリアは教えてあげた。

「そうだったんだ....」

そう小さく呟いて、ハリーはもう一つ聞きたかった事を聞こうと口を開いた。

「あの、ディメンターのことですが」

そう言いかけたハリーの言葉はノック音で遮られた。






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