一途な恋を黒犬と

□10クィディッチとバックビーク
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玄関ホールで3人と合流したマリアは、透明マントをかぶっている3人に気を使いながら歩いた。

ハグリッドの小屋にたどり着き、マリアが戸をノックした。

少し間があってから、ハグリッドが姿を現した。

「マリア、お前さんか。

来るなといっちょっただろう」

「だけどハグリッド、ハリー達も来たいっていうから...

今後ろにいるのよ。入れて?」

「余計にいかん」

そう言いながらもハグリッドはマリア達を中に入れてくれた。

急いで戸を閉めると、ハリー達は透明マントを脱いで姿を見せた。

ハグリッドは泣いていなかった。

茫然自失の様子だった。

「ハグリッド、バックビークはどこ?」

マリアはそっと問いかけた。

「外に...外に出してやった。

かぼちゃ畑に繋いでやった....。

新鮮な空気も吸わせてやりたくて」

そう言ったハグリッドはお茶を用意しようとして、手が激しく震え、ポットを落としてしまった。

ハーマイオニーがすかさず

「私がやるわ」

そう言ってハグリッドと代わった。

「ハグリッド、どうにかならないの?」

ハリーが言った

「ダンブルドア先生も尽力を尽くしてくださった。

だが委員の決定を覆す力はお持ちではない....

委員はルシウス・マルフォイのいいなりだ...

連中を脅したんだ....」

ハグリッドはぼーっと城の方を見つめた。

「ダンブルドア先生が事が行われる時に、俺の...俺のそばにいたいとおっしゃる。

偉大なお方だ....」

「ハグリッド、私たちも一緒にいるわ!」

ハーマイオニーが涙をこらえて言った。

「そりゃあいかん!お前さんたちにゃ見せたくねえ。

それに許可も貰わずに外にいるのを見つかったら特にハリー

お前さん厄介なことになるぞ」

ハーマイオニーがお茶の支度に戻るとすぐに叫び声が上がった

「ロン!し、信じられないわ!
スキャバーズよ!」

マリアもスナッフルズもハッとしてハーマイオニーの方を見た。

今すぐに捕まえたい衝動を抑えるのに必死だった。

スキャバーズはスキャバーズでロンの手からも逃げようとしている。

マリアが一瞬外に目を向けると、ダンブルドアにファッジ、死刑執行人とみられる鎌をもった男、委員会のメンバーの一人の年寄りがやってくるのが目に入った。

「皆、行かなくちゃ。大臣達が来るわ!」

マリアは3人を急かした。

「ハグリッド、私もいてはだめ?」

マリアは裏口から出る間際、ハグリッドに問いかけた。

「お前さんには辛かろう。

生物達に好かれるお前さんには特に....」

「わかったわ。

ハリー達はちゃんと城に帰すわ」

最後にマリアはハグリッドを抱きしめて、ハリー達と共に裏口から外に出た。

ファッジ達がハグリッドの小屋に入るまで、マリア達はかぼちゃの陰に隠れて様子を伺った。

一瞬小枝が折れる音が聞こえて、マリアはハッと振り向いた。

"誰か....いた?"

スナッフルズも振り向いていたが、追いかけようとはしなかったので、害のあるものじゃないのだろう。

「イタッ!」

ロンの悲鳴が小さく響いた。

「どうかしたの?」

「スキャバーズが暴れて噛み付いたんです!

こらっ、大人しくしろって!」

ロンはしばらくスキャバーズをポケットに入れようと格闘していた。

「さぁ、気づかれないうちに移動しましょう」

マリアは声をかけた。

そうして城へと戻る道の途中で、ザシュッという音がハグリッドの庭の方から聞こえた。

紛れもない斧が振り下ろされた音で、皆はショックを受けた

「バックビーク....ごめんね」

「あの人たち、やってしまったんだわ...」

マリアとハーマイオニーの呟きが沈黙した四人と一匹の間に響いた。



ショックを受けていたのも束の間、ロンのポケットに押し込まれたスキャバーズが逃げようとした。

「こらっ、じっとしてろって!
出てきちゃダメだったら!」

その時、マリアの横にいたスナッフルズが動いた。

「ダメっ!」

マリアはとっさに動いたが間に合わず、
スナッフルズはロンに飛びかかって引きづって行ってしまった。

「あぁ、もうっ!」

「マリア先生、どうして⁉」

ハリーはマリアに問いかけた。

「ロンに危害を加えるつもりはないのよ...とにかく追いましょう」

そう言って暴れ柳の近くまで走った。

「クルックシャンクス!」

マリアはさっと飛び出してきたオレンジ色の塊に声をかけた。

「お願い!」

それだけで通じたようで、暴れ柳の枝をかいくぐり、瘤に触れて暴れ柳の動きを止めてくれた。

「ありがとう」

マリアはそう言って、混乱するハリーとハーマイオニーを連れて抜け道へと入っていった。





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