COLORFUL DAYS-色 鮮やかな日々-
□モノクロの世界
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断る雰囲気でもなかった為、俺は卵焼きに手を付ける。
そして、それを口に運び、数回、噛んだ。
少し甘口の、それはとても美味しかった。
「美味い。」
「ホントッスか!?」
ボソッと言った感想を聞き漏らさなかった一条は、太陽のような明るい笑顔を俺に向ける。
図体がでかくて、見る角度によっては、近寄り難い顔付きをしているのに表情がクルクル変わるから、妙に親近感が湧く。
きっと、彼はクラスにも他でも沢山、友達がいるんだろう。
俺とは、違って……。
ゴクンと喉を鳴らして卵焼きを呑み込むと一条は、照れたように笑い
「それ、俺が作ったんッス。」
と、頬を掻く。
俺は、それに
ふーん
とだけ声を返すと、菓子パンを食べ始める。
また、無愛想な態度を取ってしまった。
そう思うのに俺は、何も言わない。
人と付き合う事が億劫だから、どうしようという気持ちがないのだ。
俺の素っ気ない態度に無言になると思っていたが彼は、何故か驚いた表情をしていた。
「先輩は、俺が料理することに何も言わないんッスか?」
「別に変じゃないだろう。料理人なんて男が殆どじゃないか。
それに俺は他人の事に意見するつもりは、毛頭ない。」
菓子パンを平らげ、缶コーヒーで締めた俺は、淡々と言った。
初対面のような相手に、どこまで愛想がないんだと、俺の良心的なものが語り掛ける。
しかし、俺は、それを無視した。
特定の人間と深く関わるのが嫌だから……。
その、理由があった筈なのに覚えていない。
思い出したくない。