COLORFUL DAYS-色 鮮やかな日々-
□モノクロの世界
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こいつが、いつも俺に声を掛けてくる1年。
平日はいつも俺に手を振って。
俺は、一度も振り返した事なんてないのに……。
全然、気にしないで手を振り続けてた奴。
俺は、遠目でしか見た事のない彼を間近にして、
これで、こいつも、明日からは、きっと手を振る事も俺に声を掛ける事もなくなる。
そう思っていた。
「あっ、俺、一条 弥琴っていいます。
」
「おっ、俺は……。」
つい、一条のペースに乗せられて自己紹介しようとした俺は、口を閉ざしサンドイッチに手を付ける。
半ば強引に話を終わらせる為だ。
しかし、それを何とも思っていないのか、一条は
「犬飼 陽人先輩ッスよね。陸上部の友達に名前、教えてもらったッス!!」
破顔一笑し弁当を広げた。
明らかに答えたくないという雰囲気で言葉を閉ざしたのに、彼は何とも思っていない。
それは、彼の態度を見れば分かる。
顔から身に纏うオーラまで、嬉々一色。
そんなキャラ今まで、周りにいなかったせいか調子が狂う。
不意に彼の弁当が目に入る。
男の弁当とは思えないほど綺麗な盛り付け。
見ただけで分かる冷凍食品など一つも入っていない。
全てが手作り。
彼女の手作りだろうか?
「先輩、俺のおかず一つあげましょうか?」
そういうつもりで見てたわけではないが、一条の目には、そう映ったらしい。
弁当を差し出す。