COLORFUL DAYS-色 鮮やかな日々-

□モノクロの世界
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早朝の部活も終了し、着替えを済ませ剛志と一緒に教室に向かうと、半日を教室で過ごす。
授業内容は変わるものの、いつもと変わらない生活。
変化を求めているわけではないが、代わり映えのしない毎日に俺は退屈していた。






昼休み。
昼食を買いに購買部に行くと後ろから
「あっ!!」
という声が聞こえ、俺は振り向く。



そこには、栗色のツンツンとした短い髪とクリクリの目。俺よりも十数センチ高い背の青年が、振り返る俺を見て、緊張と嬉しいの混ざった笑顔で立っていた。



ふと、彼の手に目が止まる。
白と緑のストライプ柄の巾着。その厚さ大きさから、それが弁当箱と分かる。


誰かを誘う為に立っているのだろうか?
少なくとも、俺ではない。俺は、こいつを知らない。多分こいつも俺を知らない。
誘う理由など、何処にもない。



勘違いだと、俺は踵を返し購買部へと向かおうとした。
すると、
「あっ、あの。」
と、声を掛けられる。

後ろを向くと、やはり、あの青年で……。



「何?」
人見知りの俺は、つっけんどんな言い方をする。
しかし、目の前にいる彼は、あまり気にしていないようで硬い笑顔を向けている。
どうやら緊張して俺の言い方など気にする余裕などないようだ。



「一緒に昼、食いません?」
「はっ!?」


見ず知らずの人間に昼を誘われたら、一般的には俺のように瞠目するに違いない。

良いよ。何処で食べる?

なんて何の迷いもなく答える人間などいる筈ない。もし、いたとしても、それは希少な人間か尻の軽い女ぐらいではないだろうか。
残念ながら俺は前者でも後者でもない。

よって疑うような変な目で彼を見る。



あからさまに変人を見る目を向ける俺に気付いたのか、青年は慌てて首を左右に激しく振った。



「あっ、違くて決してナンパとかじゃ……。」

「だろうな。野郎をナンパしても楽しくねぇだろ。だいち、学校でするもんでもねぇしな。
で?俺に何の用?」

「いや、だから昼を一緒に……。」

にっこり笑いながら、その目は、
さっき言ったのに
という色をしている。

俺は、またやったと
あー
と、力なく言い後頭部を掻いた。


人の話を聞いていないわけじゃないが、俺は結構、人の話した事を忘れる。それも数秒前に話した事をだ。それを剛志や他の級友等から時々、怒られる事もあるが、忘れてしまうものはしかたがない。

俺には、どうしようもないんだから……。



 
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