COLORFUL DAYS-色 鮮やかな日々-
□モノクロの世界
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お前に会わなかったら
俺は、知らなかった。
世界が、どんなに綺麗なのか
を……。
お前と出会って
モノクロだった俺の世界に
色が注した。
COLORFUL DAYS―色 鮮やかな日々―
「センパ〜イ!!」
校庭で走っていると、いつも教室から声を掛けてくる青年。
しかし、俺は彼の声以外、何も知らない。
分かっているのは年下という事だけ……。
陸上部の人間でもない彼と俺には何の接点もない。なのに彼は毎日、俺に彼の教室から声を掛け手を振ってくる。
悪い気はしないが、正直、部活の邪魔だと思うのは俺でなくとも思うだろう。
「あいつ、今日もか?入学式から毎日、飽きねぇなぁ。ホントに、あいつの事、知らねぇの、陽人?」
「知らん。と、前にも言っただろ。」
「ふーん。でも、陽人って人の顔とか名前、覚えねぇから忘れてんじゃねぇの?」
部活仲間で同じクラスの剛志の言葉に俺は何も言えなかった。
自慢ではないが彼の言う通り、俺は人の名前を覚えるのも顔を覚えるのも得意ではない。その時には覚えていても半年、一年と顔を合わせたり話さないでいると忘れてしまっている。
現に中学時代の友人も殆ど忘れ、小学時代の友人など全てというほど忘れてしまっていた。
薄情な奴
そんな言葉が俺には合っている。
こんな俺に手を振る、あいつが分からなかった。
知らないから無理もないが、知ってしまえば、あいつも俺と距離を置いて昔の静かな生活に戻るだろう。
しかし、何せよ、あいつが俺の元に来ない限り、彼が俺の事を知る事はできない。
俺は、彼を知るつもりもないから自分から動かない。
結局、暫くは、このままなのだ。