現代怪奇考 〜屋上の生徒会〜

□〜第一章:怪奇の足音〜
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「へぇ、どんな噂だ?」
「ん?……あぁーー。」
 上石は話しにくいらしく曖昧な苦笑いを浮かべている。
「最初から話すつもりで話題振ったんだろ?だったら、ここまで話しといて途中で止めるなよ。」
「いや、止めるつもりは無いんだけど、ちょっと非現実的な話だからさ〜」
 言葉を切り、それでも聞きたい?と目線を送ってきた。
 ……彪は静かに頷いた。
 それを確認した上石は一度大きく息を吸い込むと再び口を開く。
「率直に言うと今回の事件にぴったり当て嵌まる都市伝説が流行ってるんだよね〜……しかも“ちょうどこの現象が始まる直前”から。」
「……都市伝説?」
 若干、首を捻りながら言った。上石はそんな眉唾な話に右往左往するような奴ではないと思っていたのだが、意外と信心深い奴だったのだろうか、と記憶を探る。
「聞いたことくらいはないかな〜、“夕焼けの生徒会室”って名前の都市伝説なんだけど?」
 こうしたオカルトにあまり関心を示さないためか、耳にしたことすらない。
「いや、聞いたことないな…。」
「…そうか〜、まぁ彪はそういうのには興味なさそうだしね〜。」
 心なしか少し心細そうにも見える。
「いいよ仕方ない、説明してあげようか。
 ある日突然、学校の普段気にしないような所にドアがあるのを見掛けて不審に思うんだけど、気になって開けると中は夕焼けに染まった、昔無くなったはずの生徒会室になっている。驚いて引き返そうとすると扉が開かなくなっていて、窓の外には無数のバケモノが〜……
 ……って話。」
「おいおい、さすがに非現実的過ぎるだろ。第一、倒れた奴らだって死んじゃいないぞ。」
 バイオテロ説と大して変わらない程度の噂に過ぎないように思える。
「まぁな〜、だけど世の中意外と不思議なこともあるかも知れないじゃん?」
 しかし、そのからかうような口調とは裏腹に、上石の瞳からは決して冗談だと笑い飛ばすことのできない“何か”が読み取れた。
「………。」
「………。」
 若干の気まずい沈黙。
「また後で詳しく話すからさ。」
 上石はそう言うと、フラッとクラスメイト達との会話に戻ってしまった。
「……ワケ分かんねぇ」
 彪は一人呟いた。

 話し相手を失い、仕方なく舞台を振り向いた彪の耳に校長の声が響く。
『……で、あるからして皆さんも充分に気をつけて下さい。』
 流石にこの一件で疲労がピークに達しているのだろう、マイクを通してでも声に疲れが滲み出ている。
「……ふぁ〜あ。」
 ……思わずこちらが欠伸をしてしまいくなるくらいに。
『……なお、倒れた生徒・河上 康子さん、皆藤 弘美さん、中川 夏さんは伊丹総合病院の方へ入院されています。時間のある生徒はぜひお見舞いに行ってあげましょう。』
 しばらく話が続き、最後に校長がそう話を締め括ると「では、各学年一組から教室へ……」とアナウンスが流れた。

 
      (彪&会長)
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