現代怪奇考 〜屋上の生徒会〜

□〜第一章:怪奇の足音〜
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「ねぇ、また意識不明の娘が出たらしいよ」
「え〜、だから今日も朝礼なんだ〜」
「そうらしいぜ、この学校どっかやばいんじゃないか?」
 全校生徒が集められ、ガヤガヤとした体育館。斎稀 彪(さいき あきら)はその中に詰め込まれた生徒の一人だ。

 ここ藍場(あいば)市は東西を山で囲まれ、南に海を臨む自然豊かな街で、彪の通う私立双星(そうせい)高校はそんな藍場市の小高い丘の上にある。
偏差値としては中の上。しかし、学校側としては現状に満足がいかないのか、学力向上を謀っているらしく彪たちの代から特進クラスを設置するなど経営に余念がない。
 ……しかし、無事に始まったはずの双星高校の新学期は五月半ば、ある一つの問題を抱えていた。

 ――意識不明状態に陥る生徒の大量出現。

 この一週間で15人、計20人以上の生徒が意識不明になり今も病院で治療を受けている。倒れた生徒たちは倒れた場所や年齢、性別もバラバラで、共通点は全員がこの学校の生徒だということだけだった。
 未だ誰ひとりとして意識は戻らず、警察も動いているようだが原因不明のため何の対策も取れていないらしい。
 そしてそんな中、例によって噂だけが異様な早さで生徒達の間に浸透し、疫病だの、学校内で薬物が流行っているだのといった暗い噂はひたすらに生徒達の不安を膨脹させていた。
 現に友人の一人である上石 誠也(かみいし せいや)は、彪の目の前でクラスメイト達に様々な噂について語っている。
「…で、彪。お前はどう思う?」
 突然振り向いての無茶振り。
 上石はその性格故に、人によって好き嫌いの分かれるタイプだったが、誰とも隔てなく話せることから人望は厚く、その話し相手の多さと電脳に強い妹・琶耶(はや)がいることから、情報通としても一目置かれている。
「……珍しく絡んで来ないと思ったら、いきなり無茶振りか。そもそも話聞いてないんだから分かるわけないだろ。」
 誠也はやれやれ、と言わんばかりにため息を付くと口を開いた。
「だから〜、この事件の真相は次のうちどれか〜
 いちー、やばい新型感染症〜。にー、実はテロ〜。さーん、組織的なボイコット〜。よーん、ただの偶然〜。
 ……さて、どれだ?」
 一瞬だけ考え、
「……1・2は有り得ないとして、3も微妙だな。普通に考えたら4だろ?」
 ごく冷静に答える。
「つまんない奴だな〜、せっかく面白い情報混ぜといたのに。」
「まぁ、違和感が残るのは分かるけどな。」
 上石は「理解できない」という風に肩をすくめ、首を捻っている。
「……で、いちおう正解は?」
 正解に興味はなかったが、上石がこうした話題を振って来る時には大抵何か特別な、自身では正否の確認ができないような情報を抱えている。
「あぁ、あってるよ…多分ね〜。少なくとも警察とかの見解はそういうことになってるみたいだし。」
 …でも、と上石は言葉を繋ぐ。
「妙な噂が流れてみたいなんだよね〜。」
 ――彪は沸き上がる笑みを抑え切れない。上石のもたらす怪しげな情報は、退屈な日常を過ごす彪にとって貴重な刺激の一つだからだ。
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