E頂き物の小説U

□○○の秋
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夏が終わり少しずつ秋の気配がしてきた9月の終盤。

清磨は1人学校からの帰路を歩いていた。

「今日は…金曜だから家にティオがいるのは間違いないな…。あとは…部屋が無事でいてくれたらいいか……。」

そう、ここ最近清磨の部屋は無残な状態になっている。

その原因は他でもないガッシュとティオだ。

まだ夏だった頃は元気に外で遊んでいたのだが、秋になり……特にここ数週間の異常なまでの涼しさ…もとい寒さの影響で遊び場所が外から清磨の部屋へと変わったのだ。

「ったく、あいつら遊ぶのはいいが静かに遊べよな。机の中漁るわ、勝手にパソコンいじった挙げ句壊すわ、本棚は目茶苦茶にするわ……。」

恵に相談するか迷った清磨だが、恵もここ最近忙しいためなかなか切り出せない。


「ハァ…恵さんとも最近まともに会話すらしてないし…………会いたいよなぁ…。」

トボトボと歩いていた清磨だが、突然目の前が遮られた。
魔物か!そう感じたが、それは一瞬のうちに砕け散った。
「だーれだ♪」

「め、恵さん!?」

そう恵だったのだ。

「あたり♪久し振り!清磨くん!」

「恵さん…。」

ずっと聞きたかった声。
それが聞けた途端なにか優しい感覚に包まれた。

「どうしたの?清磨くん」

「いえ。ところでどうしたんですか?まだ仕事なんじゃ…」

「今日はね。たまたま早く終わったから切り上げてきたの♪………………清磨くんとも会いたかったし……。」

「えっ?なんて言いました?」
最後の意味深な発言を聞き逃した清磨はもう一度聞こうとしたのだが

「なななんでもないよ;」
さすがに恥ずかしくてもう一度なんて言えるはずがない。


いつもは1人で帰る学校からの帰路。しかし今日はもう1人いるためか自然と頬が緩む。

「そうだ。」
突然恵が声をあげた。

「私明日から秋休みなの。清磨くん明日と明後日暇?」

「別に用事はありませんが…」

「じゃあ清磨くん家にお泊まりするね♪」

「なっ!」

「ダメ?」
上目づかいで清磨をみる恵

「だ、ダメじゃないよ!むしろ光栄です!」

「ホント?良かった♪」
恵さんと二日間一緒に…そう思うだけで清磨の心臓はバクバクだ。

そこで一つの言葉が浮かんだ。


食欲の秋…読書の秋…運動の秋………¨恵さんの秋¨

ボン!

ようやく収まった顔のほてりが復活した。

「………恵さんの秋……か……。……………はっ!」
まさかの失態。声に出してしまった。

おそるおそる横をみると案の定恵がニヤニヤしている。

「き―よま―ろくん♪」

「は、はい」

「さっきなんて言ったのかなぁ?」

「い、いえ何も言ってません!」

「へぇ―そうなんだ。嘘つくんだ。」

ニヤニヤ顔で迫る恵。

「まさか清磨くんがそんなにも私が欲しかったなんて知らなかったなぁ。」



一気に完熟トマト並に赤くなる清磨

「私もね¨清磨くんの秋¨なんだよ?」

「えっ?///」

「9月入ってからまともに会えなくて淋しかったんだよ?ティオは毎日ガッシュくんと清磨くんに会えるのになんで私だけ?って…。」

「恵さん…」

2人の間に秋風がふく。

まるで2人を包むように…

「だから」
するとさっきまで曇り空だった表情がまたニヤニヤしだした。

「今日を含めて三日間¨清磨くんの秋¨を堪能するから覚悟しといてね♪」


「じゃあ俺も¨恵さんの秋¨を堪能しますよ!さっ、家に向かいましょう。ガッシュたちが待ってますよ。」

「そうね。行きましょう。」
街が秋色に染まっていく毎日。
清磨と恵の心も秋風のように冷えきっていたが一気に秋色へと染まっていった。

そしてそれから三日間清磨と恵はそれぞれの秋を堪能した。

○○の秋…みなさんは何の秋ですか?

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