Novel

□1人の魔女として・・・
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『さあ、ウィッチ。今度の魔女の修行はここです。貴方も早く一人前の魔女になって下さいよ。…では頑張って。』

私のおばあちゃん、ウィッシュは強大な魔導力を持っていて、世界を救った事のある、とても偉大な魔女。『おばあちゃん』と言っても、見掛けは全員若いんだけど…。おばあちゃんは昔、闇の魔導士ダークマターを倒したという実績を持っていて、この世界のもっとも優れた魔導士の1人で、同時に私の永遠の憧れ。私はその孫娘だけど、まだまだ半人前…。

『はい、おばあちゃん。』

…だからこうやって修行してるんだけど。いつかはおばあちゃんのような凄い魔女になりたいから、自分でも『大魔導大会』みたいなものには出場するようにしてる。
前にアルル達と出場した時は優勝して新しい魔法を覚える事が出来たなぁ…。

…それで、今度の修行場所は…?

ウィッチの目の前にはかなり荒れた森が広がっていた。荒れている上に、かなり広そうだし、何より危険そう…。

『お、おばあちゃん。この修行では何をすればいいんですか?』

『この森の奥には綺麗な湧き水のある小さな湖があります。その水は魔法薬を作るには最適と言われています。貴方は今回、その水をこの瓶に汲んで来てください。』

ウィッシュは魔法で瓶を取り出して、ウィッチに手渡した。瓶は綺麗な透明で丸く、手で持てるくらいの大きさだが、見た目よりもかなり重かった。これじゃあ、森の中をうまく移動できないから、ウィッチは同じように魔法を使って瓶を一時的に小さくして運ぶ事にした。

『この森って…、やっぱり変なモンスターとか出て来ます?』

『当然です。そうじゃないと貴方の修行になりませんもの。言い忘れてましたが、その瓶は衝撃を与えても割れないから途中で転んだりしても大丈夫です。』

こんな森に湖なんてあるのかしら?
…っておばあちゃん、私よりも瓶の心配してません?
でもやっぱり、おばあちゃんの修行は厳しいですわ。今までに簡単な修行なんて無かったから、予測はつきますけど。

『…分かりました。では行って来ます。』

ウィッチは早速、目の前の森に足を踏み入れた。

今回はちゃんとした修行をして、少しでも早く一人前になれるように頑張らないと。前の修行はあの大事件のせいでまともな修行が出来なくて大変だったもの。



…あの時は現実を自分の目で見るのが怖かった。自分のおばあちゃんがかつての敵、ダークマターに操られるなんて。無力な私は何も出来なかっし、助けたくても、恐怖で体がちっとも動いてくれかったし…。

私はあの時、シェゾさんに自分の魔導力を渡す事が精一杯でしたわ。一時はどうなるかと思ってましたけど、シェゾさんは苦戦しながらでもダークマターを倒して、おばあちゃんを助けてくれましたわ。しかも私に魔導力を返してくれるなんて…。

元々、おばあちゃんの強大な魔導力が目的だったのに、逆に疲れてしまいましたが。いつものシェゾさんじゃないとは思ったけど、すごく嬉しかった。

…私も早く一人前の魔女になりたい。おばあちゃん程にまではなれないかも知れないけど。


さっき森に入ったばっかりだけど、随分と体力を使ってしまった。考え事しながら歩いていたせいかもしれないけど…。

外見からのイメージ通り、この森は視界も悪く、ものすごく荒れている。足場が良くないから前に歩くだけでもすぐに疲れてしまう。

所々でぷよぷよが落ちてくるし、いつもの雑魚達も出て来るから、戦いは避けられない。箒で空を飛べたら楽だけど、こんな荒れた森じゃあ全く持って不可能…。

『本当にこんな森に湖なんてあるのかしら…?』

ここには人気なんてものは一切感じられないし、いるのは雑魚敵ばかり。これじゃあ、修行というより、ただこき使われてるみたい。



…でも、修行したいって言い出したのは自分自信。早く一人前になりたいのに。
それなら、最後までやり遂げないと、意味が無い。これじゃあ修行しても、自分の為にはならないもの。

…とにかく頑張らなきゃ!


最初に比べたら、だいぶ森の奥まで来た。流石にちょっと疲れてきたので、辺りに休めそうな場所を探した。割とすぐに見つかったので、少しだけ休憩した。日はまだ落ちてないけれど、木々が生い茂っていて、少し暗かった。
今まで歩いてきたからずっと足が痛くてしょうがなかったけど、少し休んだらだいぶマシになり、わずかだけど疲れも消えた。


『さあ、早く湖を探して修行を終わらせないと!』

ウィッチは立ち上がり、森の奥の湖を目指して歩き始めた。なんだか、自分に何かが近付いているような気がした。辺りには雑魚敵も見当らないし、人っ子1人も居ないはずなのに。

『もしかして…、誰かいるの?!』

後ろを振り返ったり、周りを見渡したが、誰もいないし何も無かった。気のせいかしら? 気味が悪いですわ…。
気にせずそのまま前に歩こうとした。


…がさっ

何かが足に引っ掛かった。引っ掛かったのは何かの植物のツルのようなものだった。
ウィッチはびっくりしたが、大した事じゃないと思い、歩き出した。…それが間違いだった。


ドサッ!!!

突然、ウィッチの目の前に大量のぷよが土砂降りのように降ってきた。さっき、ウィッチがつまづいたのせいだろうか。

『一体全体、何ですの?! なんでこんな変な所にぷよが降ってくるんですの?!』

慌ててこの場を離れようとしたが、ぷよが降って来た衝撃で転んでしまった。
更に悪い事に、目の前のぷよ達はウィッチ目掛けて、体当たりしようとした!

『きゃー!!!』

森の中にウィッチの悲鳴が響き渡った。…が同時に誰かがウィッチとぷよとの間に現れた!
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