Novel

□White Magic
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今日は12月23日。季節は真冬。外には真っ白な雪が降り、気温はかなり低く、吐息が雪のように真っ白になるほどだ。
今現在は長い夜が明けたばかりだけど、いつもより明るい感じがする。多分、明日はクリスマスだから電飾かなんかのせいだろう。

…ドンドン!

誰かがドアをノックしている。こんな朝早くから何の用だろう…? 今起きたばっかりだから、寝ぼけ眼を擦りながらドアの所まで歩いた。
魔導士の卵、アルルがカーくんを連れてやって来た。

『おはよう、ウィッチ! ねえ、明日の用意はもう出来た?』

『ふぁぁ…。おはようアルルさん。こんな朝早くから私に何の用ですの?』
寒さと眠気でアルルの言っている事が思い出せない。

『何って明日はもうクリスマスイヴだよ〜? 明日、ルルーのお屋敷でパーティするってみんなで言ってたのを忘れたの?』

そうでしたっけ…?



…思い出しましたわ。確か1週間位前にそんな話をしてましたわ。でも何でそんな大事な事を忘れてたかしら…。

『…すっかり忘れてましたわ。アルルさんはもう何か用意出来ましたの?』
…とりあえず聞いてみましょう。答えはなんとなく想像出来そうだけど…;;

『えへへ。実はボクもまだ用意出来てないんだ;; ウィッチなら何か良いアイデアを持ってそうだから今ここに来たんだ☆』

…やっぱり。アルルさんの事だからこんな事だろうと思いましたわ。

『…っていう事は、私に何か頼みたいって事ですわね?』

『さすがウィッチ! 勘が良いね♪』
元気よく言った答えがこれだ。…なんだか溜め息が出た。

『それで考えたんだけどウィッチもまだ何にも用意してないなら、いっそのこと2人で何か用意しようと思ったんだけど…。ウィッチはどう思う?』

『アルルさんにしては名案ですわね☆ それじゃあ何をしましょうか?』


そして、2人で何をするか考えた…。その間約30分、ずっと沈黙状態が続いた。
…突然誰かのお腹が鳴り、沈黙を破った。どうやらカーくんのお腹が鳴ったようだ。なんだか機嫌悪そうだ

『あー。ボクたちは朝ご飯無しでここに来たんだった;;』

…そう言えば、私もまだ朝ご飯食べてなかったっけ。

『まあいいですわ。朝ご飯一緒に食べながら考えましょう。カーくんにビーム喰らったら元も子もないですし。』

適当に朝ご飯を用意して2人と1匹?で食べながら色々と考えてみた。
あれこれ考えているうちに朝ご飯を食べ終わった。カーくんはぐっすり眠ってしまっていた。
ウィッチは紅茶を淹れながら、ふと思いついた事を言った。

『クリスマスと言えばやっぱりケーキですし、2人で一緒にケーキを作るのはどうでしょうか?』

『うーん…。ケーキならルルーが用意してると思うけど…。』

『うっ…;; でっでも、私達が作った方が絶対美味しいに決まってますわ!』

『(ちょっと強引じゃないかな…?) …まあ、何もしないよりはマシだろうからそれが1番かもね。うん、それに決定!』

…良かった。これで決まらなかったらきっと何も出来なかったと思うと安心した。

『じゃあ早速、材料の買い出しに行きましょうか♪ 早く行って早く戻ってきましょう。』

『じゃあカーくん、お留守番よろしくね♪ 行ってきまーす!』

外はもうすでに太陽が昇っていたが、とても寒かった。街にはクリスマスの雰囲気があちこちに漂っていて、人々は皆明日を楽しみに待っているようだ。
2人は色々な店を回り、ケーキの材料を買い集めた。人が沢山いるおかげで、お昼まで時間がかかっていた。売り切れになる前に買い出しが終わって良かった…。
材料を全部買い揃え、急いで2人は家に戻った。カーくんはまだぐっすり眠っていたのでそっとしておいた。誰だって寝ているのを邪魔されるのは嫌いでしょうよ。

『さあアルルさん! さっさと終わらせましょう! 2人いれば早く終わるはずですわ。』

『え〜。帰ってきて早々にやるの〜? ちょっと休んでからゆっくりやろうよ…。あんな人混みの中で買い出しに行ったら流石に疲れるよ;;』

『だからあなたはいつまでたっても魔導士の卵なんですわ。少しぐらい疲れてても、ケーキくらいすぐに作れますわ。』

『それとこれは関係無いよ…。…分かったよ、やれば良いんだよね?』

弱音を吐くアルルをよそにウィッチはケーキを作り始めた。アルルもカーくんを気にしながらウィッチを手伝い、一緒にケーキを作った。

…やっぱり1人より2人の方が早く出来るみたい。思ったよりも随分早くケーキの生地が出来たので、早速それをオーブンで焼いた。
家の中はなんとなく優しさを感じさせる甘い香りと暖かさで満ち溢れ、さっきまでのちょっとしたイライラが消えていった。
カーくんは相変わらずぐっすり眠っているようだが、アルルもいつの間にか眠っていた。

…こっそり寝顔を覗いたら、ちょっと笑っているような感じで、なんだかカーくんに似ているような気がした。
流石にすぐ起こす訳にもいかないから、アルルとカーくんを起こさないよう、そっと毛布をかけてあげた。

『アルルさんらしいですわね…。でも、クリスマスの前に風邪をひいたら、せっかくケーキを作っても意味が無くなってしまいますわ、まったく…。』

ふと窓の外をのぞいたら、朝に降っていた真っ白の雪は止み、外は太陽とその反射された光で眩しかった。



…そうこうしている間にケーキが焼き上がった。本当なら、ここからが楽しみのはずなのに…。

アルルはまだ眠っているけれど、1人で飾り付けをした。
ケーキにたっぷりのクリームを塗り、イチゴをのせて、真ん中にチョコペンで『Merry Christmas!』と書いた。

『…なんだかありきたりな感じになってしまいましたわ…。これじゃあ、店に売っているのと変わらないし、ルルーさん達に馬鹿にされてしまいそうですわね…。』

『うわー!さすがウィッチ! もうケーキが出来たんだね!』

『ぐーぐぐー!』

ケーキの甘い香りにつられたのか、アルルとカーくんはようやく起きてきた。

『…アルルさん、起きるの遅すぎですわ。もっと早く起きていて欲しかったんですけど…。』

『ごめん;; 部屋が暖かいから、ついウトウトと寝ちゃったよ。でも、もうケーキ出来上がったんだね♪さすがウィッチ!』

『…確かに出来たんですけど、これだとなんだかありきたりな感じがしません?』

『ぐぐー!』
突然カーくんがアルルの肩に乗った。
なんだか嫌な予感…。


…ぱくっ。

『あああっ!?』(2人とも同時に)

なんとカーくんは舌を伸ばして、ケーキにのせたイチゴを食べてしまった。

『ちょっ…。カ、カーくんなんでせっかく出来たばっかりのケーキをつまみ食いするの!?』

『…せっかくここまで出来たのに…。』

今ので頑張りが無駄になったような気がして、どっと疲れが出てきた。

『ごめんウィッチ…。ボクがちゃんとカーくんの面倒見てなかったから;;』

『アルルさんのせいじゃないですわ。ケーキが無くなった訳じゃないですし、今のは忘れて、もう一回やればいい事ですわ。』

不幸中の幸いか、カーくんの食べ方が危なくなかったから、イチゴ以外は何ともなかった。それで、今度は2人で飾り付けをする事に決めた。
…ふと気付くと、最初にケーキを作り始めた時に比べると、時間がかなり過ぎていた。空はは水色とオレンジ色にそまり、街は活気づいているようだ。

ウィッチはケーキを魔法で元の状態に戻した。見習い魔女でも物を直すことはウィッチの十八番だし。

『さっきのはありきたりな感じでしたから、もっと可愛い感じにするのが良いと思いますわ。』

『…ボクはさっきので十分可愛いと思うけど。…あっ!』

『どうしたんですの?』

アルルは突然何かを思いついたようだ。ウィッチに見えない場所に行き、そして何か作り始めた。

『アルルさん、何を作ってるんですか?』

『内緒〜。 でも、すごく良い事を思いついたから、きっとビックリするよ☆』

何十分か過ぎ、アルルは皿に何かをのせて戻ってきた。
それはカーくんの形をしたのとぷよぷよの形をした小さい砂糖菓子だった。見た目はとても可愛くておいしそうだ。

『思ったより時間かかったけど、これは飾りにはぴったりだと思うよ。ちょっと魔法使ったけどね;;』

『アルルさんにしては上出来ですわ! 早速ケーキにのせてみましょう♪』

『カーくん、今度は勝手に食べちゃ駄目だよ?』

2人はさっきの砂糖菓子をケーキにのせた。最初に出来た時に比べるとずっと可愛くなった。

『やったー!!! 遂にクリスマスケーキ完成だね!』

『…良かったですわ。でも何でまだアルルさんはそんなに元気なんですの? 私はかなり疲れたのに…。』


窓の外はもう暗くなっていた。空を見上げてみると満天の星空と三日月が優しく光っていた。
街のほうも飾られている電飾や光を反射する雪のおかげで、楽しそうな雰囲気だ。
時計を見たらもう7時を過ぎていて、ちょっと驚いた。予定よりもかなり時間がかかっていたようだ。

『もう外は暗いし、時間も時間ですから、アルルさん、今日は私の家に泊まっていったほうが良いですわね。そしたら明日は一緒にルルーさんの所まで行けますし。』

『えっ、いいの? ウィッチありがとう!』

『でも、少しは私の手伝いをして下さいね。ケーキは殆ど私が作ったんだし、今から夕飯にしないとカーくんに悪いですから;;』

確かにカーくんは空腹なのか、ちょっと機嫌が悪そう。とりあえずケーキにカバーをかけて、カーくんの手(舌?)が届かなそうな所に片付けた。

それから2人で後片付けを済ませて、夕飯を食べた。
思った通り、カーくんはまた眠ってしまっていた。…まあ、ビームされずにすんだからいいでしょう…。
今は普段なら寝ている時間だということに気付き、寝ることにした。家の明かりを消し、2人は眠った。

『ウィッチ、明日は思いっきり楽しもうね♪じゃあ、おやすみ!』

『もちろん、アルルさんもね。おやすみなさい…。』




…しばらくして月が沈み、朝日が昇ってきた。外は相変わらず、クリスマスの雰囲気が漂っているようだ。
柔らかい光が差し込んできて目が覚めた。昨日の疲れがちゃんととれていたので、ウィッチは気持ち良く目覚める事が出来た。

『アルルさん? もう朝ですわ。早く起きてくださいな。』

『う〜ん。後10分位待って〜。ウィッチは起きるの早すぎだよ…。』

アルルは寝ぼけた声で、目を擦りながら答えた。

『仕方ないですわね…。じゃあ先に朝ご飯の用意してますから、なるべく早く起きてくださいね。』

…まったく。アルルさんはなんでこんなにも気楽でいられるんでしょうか…? カーくんの方は朝ご飯が出来てから起こしても問題ないですわね。
ウィッチはアルルを気にしながら、朝ご飯を作った。

何分かして朝ご飯を用意し終えたので、アルルとカーくんを起こしに行った。
…案の定、アルルは二度寝していた。とりあえず起こそうとしたが、効果なし…。

『はぁ…。アルルさん、いい加減起きてくださいな…。』

…揺らしても起きる様子が無いので、最終手段を使う事にした。 本当は使いたくないけど…。自分の箒を持って叫んだ。

『メテオーー!!!!!』(威力はかなり弱くした。当然だけど;;)

ドッカーン!

アルルの真横に隕石が落ちた。

『うわあ!? な、何、どうしたのウィッチ!?』

アルルは飛び起きた。

『どうしたの!?じゃないですわ…。私がせっかく起こしてあげたのに、貴方が全然起きようとしないから、気は進まないけどメテオを使ったんですわ。』

『ええ!? どうせなら、もっと違う方法で起こしてよ…。さっきのが頭に響いてすごく痛いよ;;』

『じゃあ、次からはもっと早く起きてくださいな。そうすればメテオなんて使わずに済みますしね。』

…慌ただしかったが、次に2人はカーくんを起こそうとした。
こっちは何故か既に起きていた。だけど、やっぱり空腹なのか機嫌が悪そう。昨日もそうだったけど。

…結果的にはどっちも起きたから安心した。起きてくれなかったらどうしようかと思ったし。

慌ただしい中、さっさと朝ご飯を食べ、昨日作ったケーキを箱に入れて、用意をし始めた。
ルルーの所まではお昼前に行く予定だから、急いで用意を済ませた。

『そういえば、ルルーのお屋敷までどうやって行くの? 歩きだと結構時間かかるよね…。』

『それは心配ないですわ。私の魔法で簡単に行けますわ♪』

ウィッチがは箒を持ってきた。

『アルルさん、準備はいいですか? それじゃあ行きますわよ〜。』

『え!? ちょっといきなりそんなのはないよ〜;;』

アルルが慌てている間に既に2人と1匹は光に包まれていた。
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