ボカロ

□君のオイル
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『じゃあ私ならミカンかなぁ!
レンはバナナだね!じゃあいこっか』

『ん?どこに?』

『駅前スーパー』

『おおぉい!まさか本当に買いに行く気じゃ……おぃ!バカ、離せーーーー!』

こうして双子はリビングを去りましたとさ。
ちゃんちゃん。


『ミク、まだつけてたの〜?そのオイル…』

酒に酔っ払ったメイコ姉がミクの頬をつんつんする。

『うん!だってねぎだもん!』

『へぇー、まあ、ミクがいいならいっかー。ふふ、好きなものを髪に、か。私なら酒ねー』

そう言ってまた酒を飲もうとするメイコ姉を止めた。
もう眠くなってるみたいだし、仕方ないから俺が背負ってベットまで運んでいく。

(自分の好きなものを髪に…か)

ミクはもう覚えていないだろう。
昔、俺がアイスを髪につけてしまったこと。





















それはミクが6歳のときだ。
友達の髪がショートカットで羨ましいって髪を切ろうとしていたミクを俺が抑えた。

『どうしたミク?なんで切っちゃうんだ?』

『だって、ミクの髪…汚い。ぼさぼさだもん!うえーん』

泣き出すミク。
俺はとっさにこういった。

『だ、だったら艶がでるようににすればいいんじゃないか?触りたくなるようなさらさらな髪にさ!』

『…どうやって?』

『えっと…そうだな…』

『……。』

『す、好きなものを髪につける!
ほら、女の人ってクリームとかオイルとかつけるだろ?
うん!そんな感じにやればきっと綺麗になるよ!』

『わかった!やってみるお兄ちゃん!』

メイコ姉がよく髪にオイルをつけたりしてたのは知っていた。
俺もちょっとだけつけたことがある。
あれをつけると、手触りがよくなりとてもいい香りがするんだ。
ミクもきっと気に入るはずだ。
そう思い、助言したつもりだったが…

次の日、冷蔵庫から俺の大好物のアイスクリームが消えていた。
ミクが食べたのかと思い、ミクの部屋に行きドン!とドアを開ける。

『おぃミクッ!俺のアイスどこにやった!?食べちゃったんじゃないだろうな?』

体育座りして小さくなっているミクを怒鳴る。
ミクは無言のままだった。
俺はますますイライラして一層言葉が強くなる。

『聞いてるのかッ!?俺のアイス、どこやったん……』

『ふえ…おにいちゃん…』

俺は言葉を切った。
うつむいていた顔を上げたミクが涙目になっているのに気づく。
だが俺が驚いたのはそこではない。
ミクが隠していた髪の先の部分についた白い物体。

『お前、なにやって…』

『クリーム、つければ…おにいちゃんの…』

それは俺が探していたバニラアイス。
緑の長い髪にべっとりついていた。
これを見て俺はなんとなく察しがついた。
原因は昨日、俺がクリームをつけろって言ったからだろう。
でもクリームやオイルがないからアイスって…
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