小説

□文房具物語B・C
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消しゴムの白さの秘密


マーカー兄弟が怒りを爆発させた後の仕事は今まで以上にやりずらい時間だった。マーカー兄弟は2人でこちらを見ながら話し合ってるし、ボールペンのサンはそれに気づいておどおどしている。元々無口な奴だったが、まさか初めての奴に面と向かって嫌い発言されると流石に堪えるよな。

『気にするなよサン。アイツ等がおかしいから…』

『…いいんです』

あぁ、やっぱり。顔は帽子に隠れて見えないが、声のトーンからして落ちこんでるってことが分かる。兄弟はまだ内緒話してるし。超やりづれぇ。

『シャープさんはどっち派なんですか?』

『え?俺?』

いきなりオレンジからふられた質問に戸惑う俺。そんなこと考えたことなかった。(そもそもこいつらの関係知らないし)

『もちろん僕達ですよね?シャープさんは優しいですもんね?ボールペンを庇うってことは消しゴムさんを捨てるってことですよ?』

『うぐ…!?』

『いいんですか?シャープさんが1人の女の子を必死に庇ってるなんて噂になったら。もしかしたら駆け落ちの疑惑も…』

『ダメだ!俺は消しゴム一筋!君以外いらない!そう…俺は君を愛してるんだああぁぁあ』

『私がなんだって?』

白く透き通った肌にタオル一枚で包まれたしなやかな身体。朝一番の彼女はもはや女神と化していた。

『…えーと、あなたはオレンジだったよね。はじめまして。シャープペンシルが鼻血出して倒れちゃったから代わりに説明してくれる?』

『はぁ……』

それから数時間後。
俺は幸せの絶頂にいた。
花畑に立つ1人の女性。白い透き通った肌にタオル(以下略)。あのツンデレ彼女が振り向き手を振ってくれている。俺は駆け出した。幸せいっぱいのあの世へ―――

『早く起きなさいよ』

『ブふッ!』

顔面を殴られ、凹み、身長が少し高くなる。いつ折れてもおかしくない程度にまで芯が出てしまった。

『え、消しゴム……?』

『もう終わったよ、仕事。サン殿が頑張ってくれたから』

『……………あ、サンのことか。そうか、俺の代わりにサンが』

『サン、頑張ってたよ。マーカー兄弟にいろいろ言われながらも』

『あいつら…』

『でも仕方ないわ。あんなことがあったんだもの。マーカー兄弟の気持ちも分からなくはないわ』

消しゴムは長いため息をつくと、真っ白な太ももをさする。あー、ちょっと待って。見える、見えちゃうよ消しゴム。もう少しで…

『……肌、白いでしょ?』

『そりゃあ見とれるほどの美しさで…』

『気持ち悪い』

え?

『白いなんて、あり得ない』

おわ、消しゴムの太ももが…!!?

俺の足を太ももで撫でる消しゴム。ちょ!ちょ!ちょー!太ももが…憧れの太ももがあああぁぁあ!!!!!!!!?( ̄□ ̄;)




ポキッ






ポキッ?(´・ω・`)







俺の長い足が彼女の鋭いキックであっさり折れる。

『え?えええぇえ!?』

『最悪よ、最低!私、サンを手伝うこともマーカー一家の手助けすることもできなかった…!私、いる意味なかったの!』

『い、いや。そんなことないだろ!……っていうか、折れた俺の足を踏みつけるのやめてくんないか?』

ボロボロに砕けた芯。あぁ、なんて痛々しい。
こちらを睨む消しゴムの瞳は潤んでいるように見えた。

『元はといえばあんたのせいだからねッ!』

そう言うと消しゴムは走り去ってしまったが、俺は追いかけることもできずただその場に立ち尽くしていた。


俺のせい……?俺なにかしたか?え?サンとマーカーのことか?どういうこと?
理解不能になり混乱していると後ろから肩を叩かれた。

『ん?…なんだ、サンか。悪いが今は1人に』

『なにいってるの。youは何も知らないのね』

俺を見てため息をつくサン。煙草の煙が体を渦巻く。

『だってさ…』

『あの子は肌をblackしたくて仕方ないの。でもwhiteでないと仕事にならないからって毎日落としてる』

『でも白い方が…』

『人それぞれでしょ。日焼けしたいっていうgirlも少なくないわ』

仕事とはいえやりたいことを制限されている消しゴムの気持ちは痛いほど分かった。今の自分と同じだからだ。

『そうか…、消しゴムも…』

『そうよ。だからしっかり仕事しなさい。なんだかんだ言ってyouが動けないと消しゴムも消せないんだから』

『あ、そーゆーことか』

俺が書かないと消しゴムは消す必要がないわけだな。

『じゃあ私、My roomに戻るから』

『おぅ!またな、サン』

『See you』

こうして今日の仕事が終わった。俺は何もしていないが、少しだけ消しゴムのことが分かったような気がする。俺の知らない消しゴム。知ってはいけないところもあるかもしれない。後悔することもあるかもしれない。…いや、知らなくて後悔するよりかはマシか。
俺は消しゴムを思い浮かべながら暖かな気持ちで満たされていた。



















『って誰だオメエェ!?キャラ変わってんじゃねぇかッ!!え?ちょ、タバコ!え?サン、お前……!』

『気づくの遅いよ。このままendするのかと思ったわ』

消しゴムの前に他のメンバーを知る必要がありそうなシャープペンシルでした。
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