小説

□文房具物語B・C
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ボールペンは多重人格?





『だめぇ…!
私、アナタが動いてくれないとダメなの…!だから……』

『だから何だい消しゴム?』

『だから…早くぅ…』

こうとまでとはいいませんが、シャープペンシルの頭は常に春が来ているご様子。

『やべぇ、今のシチュエーションいい…、滅茶苦茶可愛い消しゴム』

このにやけてていかにも変な妄想してますオーラを放っているのがシャープペンシル。そして別室。

『んー、なんか悪寒がするんだよね。なんでかな?』

シャープペンシルの妄想対象となっているこの美しい女性、彼女が消しゴムでございます。
今回は消しゴムでなくシャープペンシルの話になります故、話をあのにやけてる男性に戻します。

『俺がいなきゃ動けないとか…カワユすぎる!
つまり俺なしでは生きられない体な訳だろ?もう結婚までいっちゃっても…』

『その気持ち悪いface、やめてくんない?』

『うわッ!?…サン!』

こちらは前回問題となりましたサンのことボールペン。
性別は女。麦藁帽子少女から煙草キャバクラ娘に変わった方でございます。

『お前、昨日はよくも……!』

『What?私、何かしたかしら?』

『よくも純粋少女イメージを壊してくれたなサン!
麦わら帽子とワンピースっていったら純白少女だろ!
それがなんだ…真っ黒ケバいお姉さんになってんじゃねーか!』

『偏見でしょソレ』

ふぅと煙草の煙を吹きかける。
副流煙を吸って苦しんでるフリをしているシャープペンには目もくれず話始めた。

『私は多重人格なの。OK?』

『全然OKじゃない』

『今の私はblueなの。ほら見てて』

サンが歩くと綺麗な青い線がひかれた。
片足をあげ、爪先でトンと床を叩く。

『んで、こーすると……性格が変わるようになっているのですわ』

さっきまであんな盛ってあった髪がするすると解け、ゆるふわウェーブに変わる。
ふんわりとしたベールに包まれ現れた姿はお嬢様のようだった。
これがボールペンの“赤”である。
そう…彼女は三つの顔を持っているのだ。

『シャープももっとオシャレに気を使ったほうがいいわよ?
このままだと愛しの消しゴムさんが誰かにとられてしまうわ』

『なにッ!?』

消しゴムはこの筆箱の中では一番美人だ。
それは知っている。当然モテるが、
他の男から言い寄られるのは、
出勤中たまたま転がってきた別のシャープペンや
時々まぎれてくる男の消しゴム…どれも
数回の顔合わせでこれといったライバルは思いつかないのだが。

『甘いですわね』

にやりと笑うサンに嫌な予感がする。

『今度の土曜日を楽しみにしてなさいな。
きっと面白いことがおこるわよ』

ほぼ平日出勤の俺たちは土曜日は全国テストの日ということで臨時出勤をする。
その日に何か起こるのか…?

シャープペンは初めて迎えるテスト日に不安を覚えた。
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