「休日」 6000hit thanks
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「しゅーへー」
 畳の上でごろごろとしている恋人の上に座る。
「んー」
「あそびにつれてってー」
「んー」
 どうやらまともに取り合うつもりは無いらしく、同じ返事しか返ってこない。
「遊びに行って来るからね!」
「んー」
 修兵は、私が修兵を想っているほど、私を想ってくれていないのだろうか。いたずらをしてみようか。裸に剥いて、墨で落書きをする。こいつ、寝てる。
「なんてな」
 ガッと手首を掴まれて、心臓が止まるかと思った。
「よくもまぁ・・・『俺は約束破りの嘘吐き男です』・・・これ酷くない?」
 腹に書かれた文字を読んで、私を見た修兵はぎょっとした。私が泣いてたからだろう。
「修兵、今日何の日か知ってる?」
「・・・なんかあったか?」
「死ね!」
 みぞおちに正拳を入れて窓から外へ出る。本当に。本当に久しぶりに私の誕生日と、休みの日が重なったのに。
「冗談!冗談だから!戻って来いって!」
 素肌の上に上着を引っ掛けただけの姿で修兵が追ってくる。
「そんな格好で追っかけてこないでようー」
 あれで抱きとめられたら、確実に墨が私の服に付く。今日下ろしたばっかりの新品だ。
「解った。お前が止まったら、俺も止まる」
「ほんとにー?」
「おう!」
「ほんとにー?」
「おう!」
「ほんとー?」
「キャッチ!」
 手首を掴まれた。ああ、終りだと思った瞬間、予想外だが抱きしめられることは無かった。
「おめぇ・・・忘れてやがんな?」
 怒ってるぞ、といわんばかりににらんでくる修兵に思わず数歩下がった。
「え?」
「え?じゃねえだろうがよ。今日は1時から外出だと言っただろうが」
 今は11時。
「言った?」
「昨夜言っただろうが!」
「昨夜?あのねぇ!私の意識があるうちに言ってくれるかなあ!」
 こんどは修兵が下がった。
「お、俺のせいかよ!」
「おめぇのせいだぁあああ!」
 あれだけガンガン攻めておいて私が物を聞き取れる状況だったとでも思ってんのか?
 しょうがない。高いものを強請ってやろう。財布がすっからかんになるまで金を使わせてやるんだから!

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