華迪
□『仕事』
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自分一人だけになり
小龍はベッドに横たわったまま、身動きせずにどこか虚ろな瞳をしていた
それは何かを諦めてしまったような
それは何か大切なものを失くしてしまったような
そんな瞳
特に何を考えているわけでもない
眠くてうとうとしているわけでもない
(風呂………入ろ)
ぼんやりとやっとそれだけを考えた
口も濯いで
綺麗に洗って
そうだ
中に出されたの、取らなきゃ
後々痛くなるし
処理しないと
◆◇◆
シャーーー
(あったかい………)
シャワーを浴びる小龍の瞳には光がなく、淀んだ琥珀色をしていた
体が暖まった小龍は浴槽に腰をかけた
自分の腕を掴み俯いて
なかなか顔をあげず、うずくまるように
シャワーの音だけがしばらく空間を支配した
『こういうの、すっごい嫌でしょ』
客に言われた言葉が耳に残っている
かなり動揺してしまった
(嫌だ)
「嫌じゃない」
(嫌だ)
「嫌じゃ…ない」
腕を掴む手に力が入る
嫌なんて認めない
絶対、認めない
認めてしまったら───
ぐっとまた力が入り、手は白く、腕に爪が食い込む
────壊れる───
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