華迪

□『仕事』
2ページ/2ページ







自分一人だけになり


小龍はベッドに横たわったまま、身動きせずにどこか虚ろな瞳をしていた





それは何かを諦めてしまったような


それは何か大切なものを失くしてしまったような




そんな瞳






特に何を考えているわけでもない

眠くてうとうとしているわけでもない







(風呂………入ろ)




ぼんやりとやっとそれだけを考えた







口も濯いで

綺麗に洗って



そうだ

中に出されたの、取らなきゃ



後々痛くなるし


処理しないと














◆◇◆





シャーーー







(あったかい………)



シャワーを浴びる小龍の瞳には光がなく、淀んだ琥珀色をしていた







体が暖まった小龍は浴槽に腰をかけた



自分の腕を掴み俯いて


なかなか顔をあげず、うずくまるように





シャワーの音だけがしばらく空間を支配した










『こういうの、すっごい嫌でしょ』


客に言われた言葉が耳に残っている


かなり動揺してしまった




(嫌だ)

「嫌じゃない」


(嫌だ)

「嫌じゃ…ない」



腕を掴む手に力が入る






嫌なんて認めない

絶対、認めない



認めてしまったら───




ぐっとまた力が入り、手は白く、腕に爪が食い込む






────壊れる───





NEXT
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ