単話

□いつかお前を
2ページ/3ページ

いつもどこか……


寂しげな

苦しそうな

悲しそうな目をしている





手を伸ばしても、触れる寸前に握りしめて、その人が歩いていく背を見ている





それはどこか諦めで……





前の世界では、自分の咎(とが)でもねぇのに投げつけられる石を避けもせずに、ただ、じっとそれを受け止めていた





そこで起きたことは自分のせいだと言わんばかりに





あいつらもあいつらだ、特に姫が無意識にあの小僧と『あいつ』を重ねてしまっている

似ているところを見つける度に苦しげに目を伏せて、『あいつ』を避けている

……理由はそれだけじゃねぇみたいだが……





このままだと、『あいつ』は自分に価値を見い出せなくなってしまう

……笑うことが出来なくなってしまう



まだガキなのに

背負うものが

抱えているものが

苦しさが大きすぎる





だからといって、俺がそれら全てから『あいつ』を支えてしまってはいけない

そんなことをすれば、『あいつ』は二度と歩けなくなってしまうだろう





だから──────





やり方が合っていたのか、これで正しかったのかなどは分からない

それでも……





『ありがとう』





『あいつ』は微笑みながらそう言った

ずっと、はりつめていたその表情を弛めて……





穏やかな微笑みだった





きっと、それが本来のものなのだろう

微笑むことも出来ないくらいに余裕が無い……

酒を飲んで、すぐに眠ってしまうくらいに心が疲れている











『それでも──────
守る……必ず』


寝ぼけながらも、真っ直ぐで……

いつも誰かの為で





『……寝ろ』

今だけは……せめてゆっくり休め

目覚めたら、また闘わなくてはならないから











本当は、『お前』を苦しめる全てから守りたい


強く、強く抱きしめて

独りではないと、全てを背負わなくても良いと





これは、とても激しい感情





それをしてしまえば、きっと『お前』を壊してしまう


だが、いずれは







─きっと─────


────手に入れてやる





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ