単話
□いつかお前を
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いつもどこか……
寂しげな
苦しそうな
悲しそうな目をしている
手を伸ばしても、触れる寸前に握りしめて、その人が歩いていく背を見ている
それはどこか諦めで……
前の世界では、自分の咎(とが)でもねぇのに投げつけられる石を避けもせずに、ただ、じっとそれを受け止めていた
そこで起きたことは自分のせいだと言わんばかりに
あいつらもあいつらだ、特に姫が無意識にあの小僧と『あいつ』を重ねてしまっている
似ているところを見つける度に苦しげに目を伏せて、『あいつ』を避けている
……理由はそれだけじゃねぇみたいだが……
このままだと、『あいつ』は自分に価値を見い出せなくなってしまう
……笑うことが出来なくなってしまう
まだガキなのに
背負うものが
抱えているものが
苦しさが大きすぎる
だからといって、俺がそれら全てから『あいつ』を支えてしまってはいけない
そんなことをすれば、『あいつ』は二度と歩けなくなってしまうだろう
だから──────
やり方が合っていたのか、これで正しかったのかなどは分からない
それでも……
『ありがとう』
『あいつ』は微笑みながらそう言った
ずっと、はりつめていたその表情を弛めて……
穏やかな微笑みだった
きっと、それが本来のものなのだろう
微笑むことも出来ないくらいに余裕が無い……
酒を飲んで、すぐに眠ってしまうくらいに心が疲れている
『それでも──────
守る……必ず』
寝ぼけながらも、真っ直ぐで……
いつも誰かの為で
『……寝ろ』
今だけは……せめてゆっくり休め
目覚めたら、また闘わなくてはならないから
本当は、『お前』を苦しめる全てから守りたい
強く、強く抱きしめて
独りではないと、全てを背負わなくても良いと
これは、とても激しい感情
それをしてしまえば、きっと『お前』を壊してしまう
だが、いずれは
─きっと─────
────手に入れてやる
∴