単話
□下心
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「また、明日ね」
「うん、また明日」
サクラは帰るクラスメイトに手を振る
(暇だな……)
帰り支度も終わり、することが無くなったサクラは誰もいない教室を眺める
ガラララ……――
さっき小狼がいたドアとは違う、反対の方が開いた
「小龍君」
そこには小狼の双子の兄 小龍がいた
手には白や赤のチョークが入った箱を持っている
今日の日直でチョークを取りに行って帰って来たようだった
「日直、お疲れ様」
「ありがとう」
微笑みを浮かべ、礼を言う小龍
(やっぱり小狼君と全然違うな)
小狼はとにかく真面目で素直で、そんな小狼とは全くの別人。とまではいかないけれど───
一卵性双生児だから見た目はそっくり。というより瓜二つ。だが、纏う雰囲気や性格は違う
「サッカー部呼ばれてたな」
「え?うん、そうだね」
黒板をキレイにしながら一度振り向いて小龍は話しかけた
「小狼、職員室で見かけたけど、すぐには戻って来れそうになかった」
「そっか…あ、私日直の仕事手伝うよ」
「え?」
「私やることなくて暇だし、手伝ってもいい?」
「あぁ。じゃあ…窓閉めやってくれるか?」
「うん」
サクラは窓を閉めながらふと校庭を見ると
(あ…小狼君)
サッカー部の人達が外に出ていた
何故か雑用をしているみたいで、花壇の肥料を運んだりしている
(これじゃすぐには来れないね)
小龍の先ほどの言葉を思い出しながらサクラはクスッと笑い、納得する
「どうした?」
「え!?」
振り向くとすぐそばに小龍がいた
「あ、別に、なんでもないよ」
顔を赤くしながら首を振ると、止まっていた手を動かした
「ふーん、成る程ね…」
窓に寄りかかり校庭を見た小龍はサクラの様子に納得した
「そろそろ花壇も植え替えだしな」
小狼の話じゃないことに安堵して頷く
「うん、そうだね」
「今度は何を植えるんだろうな」
「パンジーかな?去年植えたんだ。黄色とか鮮やかで綺麗でね、とっても可愛かったの♪」
と、サクラは小龍を見ると自分を見つめる瞳があった。
サクラはハッと息を飲んだ
「……サクラさんもね…」
「え?……──」
─何故だか─────
──目が逸らせなかった─
∴