華迪
□待ち時間
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いつもは
考えることなんて何もないのに
4.待ち時間
「………………」
小龍は自分の部屋のソファーに座り、背もたれのところに肘をついて時計を見ながらボーッとしていた
「…………あと30分」
ポツリと呟き、頬杖をやめ両腕を枕のように顔をのせた
(……黒鋼……)
変わった人だ、と思った
ここに来るのは皆自分の欲求不満を晴らすため
来たくもないのにわざわざ来るなんて、変な人もいるものだ
小龍はほんの少し、そうとは分からないくらい微かに微笑みを浮かべた
(また来ないかな………)
ああいう人は初めてだった
(ん!???)
なんだそれ
(………………)
小龍は真面目に自分の思ったことに戸惑いを感じた
ハァッと息を吐いて目を閉じる
(……馬鹿馬鹿しい)
コンコン───
(…………)
『時間だ。出てこい』
「…分かった」
小龍はソファーから立ち上がり、ふと鏡を見た
(俺は……何なんだろう)
鏡から目を反らし足を止めた
鏡なんていつからまともに見てないんだろう
そこに映る自分を見たくなくてすぐに目を逸らす、それを繰り返してきた
小龍はスッと息を吸うと前を見てドアへ向かい歩き出した
(汚いなんて今更だ)
ここに来る奴等、いる奴等
みんなみんな、穢れている
そう、自分も
(…やっぱりもう、あの人には会えない)
こんなところに来て欲しくない
それに
(…汚れている)
カチャ────
「お客様がお待ちだ。さっさと行け」
「はい」
見下してくるオーナーの横を通り廊下の先を見る
少年は『仕事』をするために歩き出した
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