華迪

□少年
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赤い跡が、心の叫び




2.少年




「……………」

「……………」







すぐにオーナーは出ていき小龍と名乗った少年が残された。



 どうしろというんだ



この店がどういう店なのかは当然知っている

だから嫌いなのだ

来たくなかった


 なのにあの野郎………




黒鋼の機嫌はすこぶる悪い





小さく小さくため息をすると目の前の少年を見た



瞳と同じ色の茶色い髪

端正な顔立ち

大人と子供の間くらいの成長期真っ只中だろう


その少年の視線は何処か別のところに向けられている



(……………)

黒鋼には1つ気になることがあった



「なんだ、それは」



一度も黒鋼を見ようとしなかった瞳が初めて黒鋼に向けられた



「…何が」



少年は静かに聞き返した



「手錠だ」



少年を見たときから気になっていたこと

それは手錠が少年の両手首にかけられていたことだった



「抵抗出来ないように、に決まってるだろ」


事も無げに言うとまた視線は外される


それを聞いた黒鋼は眉間に皺を寄せて少年の手首を見た

赤くなり傷ついている

とても痛ましい

抵抗したのだとその傷か訴えてくるようだ



黒鋼は近くのソファーに背を預けるように座った



「いつまでここにいりゃいいんだ」


「1時間」





……長い



「ッチ」


あの野郎……何考えてやがる………



「変わってるな」


「あぁ?」


相変わらず黒鋼に視線を向けずに小龍は言葉を続ける



「来たくもない所に来るなんて」



黒鋼は少年を睨み付ける



「……ホント、珍しいよ」



少年の瞳が黒鋼に向けられた

無表情だった少年の顔に初めて感情を見た




寂しそうな、瞳だった



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