単話

□熱からの解放
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【恋人設定】























「『小狼』、どう?」


小狼は水で濡らした布を絞り、それを『小狼』の額に乗せながら心配そうに聞いた


「ん……大丈夫…」


ゆっくりと目を開けて小狼の方を見ると、弱々しく『小狼』は微笑んだ

見るからに全く大丈夫そうではない

顔は赤く火照り、苦しそうに呼吸している

滅多に風邪をひかない『小狼』だから、少しの風邪でも辛い。なのに、今回の風邪は高熱が出ている

相当辛いだろう……


「なかなか熱、下がらないな……。『小狼』、なんか食べられそう?」


ふるふると弱く首を横に振った

小狼は少し腰をあげ、手を『小狼』の首筋に当てた。体温が高いことが手から伝わる


「んん……擽ったい…」


『小狼』が少し笑いながら言った


「お前の……手……冷たくて気持ち、良いな……」


小狼は微笑むと屈み、『小狼』の唇に触れた

触れるだけの軽いキス

『小狼』は先程より目を開けて、こちらを見つめてきた


「ねぇ、『小狼』知ってる?」

「…なにを?…」


小さな子供のように聞いてきた『小狼』の耳元で、囁くように言った






「風邪は人にうつすと治るんだよ」







どういう意味なのか理解していない『小狼』に分からせるために、またキスをした

今度は深く、長く

『小狼』の体温が高いのもあり、とても熱いキスだった

唇を離すと『小狼』は、はあ、はあと息を整えようとした


「っはぁ…はあ…なにっ…するんだ…」

「嘘だよ」

「?」

「うつすと治るってのは」


小狼はずれたタオルを取ると側にある水の入ったおけに入れた


「でも、聞いたことあるでしょ?」

「……まぁ」


あまり納得のいかない顔で『小狼』は頷いた


「『小狼』」

「…なに?」

「試してみよ?」

「嫌だ」

「………」


あまりにも即答だったので小狼は少し傷ついた

というかガッカリした

あまり無理させるわけにはいかないから仕方ないが


「………そんなことシて、お前に風邪…うつったらどうするんだ」


『小狼』の言葉に小狼は驚いた

自分自身が辛いのにそんなときまで自分のことを心配してくれている


「『小狼』が看病してくれるんでしょ?」

「…けど…」

「ほら、汗かいて暖かくして寝ると治るっていうし、
……その時は、『小狼』がシて」

はぁ…とため息をつくと


「…分かった」


小狼は微笑んで布団を退けてキスをした



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