単話
□手に入れたいと思ってたの
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パロディです。双子じゃないので小狼にしましたが性格は小龍をイメージしてます。
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「黒鋼、ちょっといらっしゃい」
母の呼ぶ声が聞こえ、なんだろうと思いつつ母の元へ向かった
母のいる部屋の障子を空けると綺麗に身なりを整えた母がいた
「今から出掛けなくちゃならないの。その間、この子の面倒を見ていてくれる?」
そう黒鋼に頼む母の腕には赤ちゃんが抱かれていた
昨日、昔から馴染みのあるという李夫妻から預かっている子だ
3日間預かることになっている
黒鋼には赤ちゃんを相手にどうしたらいいのかと内心たじろいだが…自分がみているしかない
「分かった」
母の頼みに頷くと、お願いねと言いながら黒鋼に赤ちゃんを抱かせた
腕にかかる重みに緊張してしまう。落とさないようにしっかり抱えこんだ
…………で、どうすればいいんだ?
母が出掛けてしばらく抱いたままでいたが、腕が限界になりとりあえず下ろして座らせた
きょとんとしていたがすぐにハイハイしだして、近くにあったぬいぐるみを掴んで彼なりに遊び始めた
黒鋼はその様子を胡座をかいて見ている
まぁ…このままでいいか
今の状態でも大して問題ないと判断し、とにかく目を離さないように本当に見ているだけにした
「…なんだ?」
ぬいぐるみで遊んでいた赤ちゃんは、自分を見ている少年に興味を持ったのかじっと見つめ、ゆっくり少年に向かっていった
少年の元にたどり着くと赤ちゃんは小さな手を伸ばして少年の腕の部分の服を掴み引っ張る
やっぱり一緒に遊んだりとか…したほうがいいのかな
服を掴んでいる赤ちゃんを見て思案していると、胡座をかく黒鋼の足に触れ、よじ登り始めた
ぎょっとして赤ちゃんを見ると案外強い力で黒鋼は胸元の服を掴まれぐいっと引き寄せられる形になった
黒鋼の驚きに見開かれた目を間近でじっと見つめる幼いくりっとした琥珀の瞳
固まる黒鋼の顔へ小さな手が伸ばされ、黒鋼の頬に触れた
なんだ?と口には出してないが目で聞いてくる黒鋼に小狼は妖しく笑みを浮かべると口を開いた
「目」
小狼の言葉にいまいち意図を掴めず思わず眉間に皺が寄る
それをおかしそうに見る小狼の目がどこか懐かしさを込めたものに変わった
「この目が好きだった」
そう言いながら伸ばした手で優しく黒鋼の頬を撫でる
「違うな。小さい頃から…ずっと、か」
よく見ようとするように両手で黒鋼の顔を挟むと黒鋼は言った
「そうだな」
黒鋼の予想外の言葉に小狼は目を見開いた
「あれ、知ってた?」
「あぁ。お前赤ん坊のときから俺の目を見てはしゃいでるガキだったからな」
「そんな…ときから…」
小さい頃からという自覚はあったがさすがに赤ちゃんのときからだったとは気づかなかった小狼は絶句した
そんな小狼を見て黒鋼は笑みを浮かべると小狼を引き寄せた。お互いの息が分かるほど近くなった距離でお互いを見つめ合う
どちらからともなく自然と更に近づいき、0になった距離で互いの唇を触れあわせた
柔らかい感触に小狼は目を細めるとぼやけて見えなくなった黒鋼の瞳を残念に思いつつ、目を閉じた
END