突然の雨のせいで僕は半分壊れた建物の中で雨宿りをする羽目になった。中は電灯もなくかろうじて辺りの様子がわかるだけ。頭の上に大粒の雨が落ちてきた。雨漏りだ。突然周囲が明るくなり、雷鳴が轟いた。その瞬間、僕は小柄な人影を見た。逆光で顔は判別できなかった。わかったのは女であるらしいことだけだった。人の存在に慌てたが女だと知り安心した。この辺りは治安が悪いのだ。これが男なら間違いなく金目の物は全て盗られていただろう。けれど所詮女。単なる僕と同じ雨宿りに違いなかった。
不意に首の辺りに冷たいモノがあたる感触がした。ほぼ同時に身体に痛みが走る。「今すぐ立ち去れ」と高くて可愛らしいが硬質な声が響いた。「はやく立ち去れ。ここにこれ以上いたら頸動脈斬るぞ」女は静かに言った。

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