DEATH

□愛情と探偵
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ベルの音。

大きくて低い音。


今日、私はこの老人に引き取られる。


「L。怖がらなくてもいいのですよ。」

この老人の名前はワタリ。


秘密主義らしく、
詳しいことは教えてくれないが、
いい人ということは確からしい。

「ワタリ、ここはどこですか?」

街の中でも目立たないその土地には、
学校らしき新築の建物があった。

「ここは、あなたと私が住む、
秘密の家、とでも行っておきましょう
か。」


ワタリはわたしにウインクして
そう言った。

両親とはここへ来るまでまだ一度も
会っていない。


「両親は、私を捨てたのですか?」


別れの時ならば、顔くらいみせても
いいのでは?

もう、嫌いになったのかも知れない。
そう思った。

その時ワタリがこちらに向き直り、
私の肩をつかんだ。


「L、そんなことをいっては
なりませんよ。
ご両親はあなたを捨てたわけでは
ありません。ただ.....」

「ただ....?」

ワタリは更に手に力をこめた。

「ただ、
あの方たちは
怖かっただけなのです。」

「....怖かった?」

怖い......

私が......?


「L,あなたには他の人にはない頭脳、
思考回路があることは、
自分でも解っているでしょう。
あなたは、5才にしてあの方たちより
優れていた。だから、少し、
ほんの少しだけ、怖かったのです。
自信が無かったのです。」

「どっちにしても、
捨てられたのに代わりはありません。」

あの人たちは、
私を置いて、逃げてしまった。

それは変えられない事実。


「L。

聞いてください。
あの方たちは私にあなたを託す時、
私に言いました。

『Lを、Lの頭脳を世界の為に
なるように、
あの子が、熱中できるような....

世界一の探偵に....育ててやってください』


あの方たちは、あなたを見捨てたわけでは
ありません。

あなたの活躍できる場所を
提供しただけなのですよ。」

「私を探偵に.....?」

「探偵、それは
決してなまぬるいものではありません。
命をかけてやる仕事。
時には大けがだってします。
それでも、守る、
それでも、捜査する、
それが探偵です。

興味がありますか?L。」

あの人たちが
そんなことを考えてたなんて
全くの見当違いだった。

探偵。

確かに、世界一になるのは
簡単ではない。

でも、
あの人たちが
望んでいる。

ワタリだっている。

「わたしにも、
なれるでしょうか。」

 
自信はまだない。

でもこれからつけることは
できるかもしれない。

ワタリは満面の笑みを浮かべた。
その老いた顔はもうしわくちゃだった。

「あなたにしか、
できない、そう思います。」


   



ベルの音がまだ響いていた。
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