Z*L..〜Short Story.@〜

□にこにこ星
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〜にこにこ星〜




「おーいロイドくん、ちょい来てみ〜?」
「…‥んー、なんだ?」
時刻は夕方の6時頃。
今日も一日を終え、自室のベッドの上で胡座をかいて愛用の双剣の手入れをしていた時のこと。
突然窓際らへんにいるゼロスに呼ばれて、目線は下のままに気のない返事を返す。
「いいからいいから〜v」
「??」
妙にご機嫌な様子に眉根を寄せて顔を上げれば、思った通りにっこりと満面の笑みを浮かべたゼロスの姿が。
ちょいちょいと手招きして俺を呼んでいるのに、今は愛剣の手入れをしているんだぞと不機嫌な顔になりながらも、ベッドから腰を上げてそちらに歩み寄った。
「で、なんだよ?」
顔に負けないくらいの不機嫌な声を出して、ゼロスを軽く睨み上げる。
「あれ見てみ〜v」
しかしそんな自分の態度に全く動じることなく、更に笑顔になって窓の外を指差してきて。
ホラっと言ってずいっと近づいてくるのに圧されて、面倒臭さげにゼロスの指差す方を見上げた。

「あっ‥」
そこには、2つの星と三日月が逆三角に並んだ、まるで顔の形のような模様が夜空に浮かんでいた。
「すげー‥!アレいつからなんだ?!」
「わっ、ちょ‥ハニーっ」
初めてみる模様に興奮して体を乗り出せば、焦ったゼロスがとりあえず落ち着くようにと手振りで訴えてくる。
それにハッとして体を元に戻せば、苦笑したゼロスと目が合った。
「俺さまも今見つけたんだ」
月の形が笑ってるみたいで可愛くないか?
そう言われて、もう一度空を見上げる。
本当だ、確かに笑ってるみたいだ。
「うん、可愛いな」
こんな星、初めて見る。
微笑んでいるようなその模様がまるで子どもが描いた絵のようで。
不思議な微笑みが浮かび上がる光景に、つられて自分も笑みが零れる。
そんな俺に、知らせた本人もとても嬉しそうで、満足気な顔が視界の端に映った。
「ハニー、ホント星好きだもんな〜。絶対喜ぶと思ったんだ、俺さまv」
え?
嬉しそうに話すゼロスに、目を見開いて思考がストップする。
星が好きだってこと…、ゼロスに言った覚えはない‥はずなのに、なんでそれを?
「なぁゼロス。なんでお前、俺が星好きだってこと知ってんだ?」
絶対に知っているはずがない、というか今まで誰にも、大親友のジーニアスでさえ言ったことはないのに。
別に隠していたわけではないけれど、俺が星を好きなんて照れ臭いから、誰にも言わなかったんだ。
その‥恋人である、ゼロスにも。

「んー?…まぁ知ってるもなんも、ハニーのこと見てれば分かるつーかなんつーか?v」
ロイドくん、夜になるとよく空見上げてるし、天気の良い日は朝からご機嫌だし?
そう言ってにっこり微笑まれて、ドキンと胸が高鳴った。
たった、それだけで…?
なんか、なんというか、…‥恥ずかしい。
俺のことよく見てくれてるんだって、とっても嬉しい気持ちになる反面、見透かされたことが悔しいとも思う。
「ハニー?」
暫く考え込んでいた為、話さなくなっていた俺をゼロスが心配そうに覗き込んで漸く思考が終了。
慌てて焦った返事をすれば、どうしたのかと更に心配気な顔をされて。
なんでもないと強く返事をして、まるで自分の心に言い聞かせるように動揺した気持ちを抑え込んだ。
俺のこと、ちゃんと分かってくれていて嬉しいなんて、口が裂けても言えないから。
そんな俺に、まだ納得のいってなさそうな顔しているゼロスに気付かない振りをして。
ごまかすように、再びにこにこ顔の星を見上げた。










..fin




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