ようこそラメールカフェ!

□祭りの夜は
2ページ/5ページ


「みなさん、何の話してるんですかぁ?」

「あっユリちゃん」


倉庫整理を終えたユリが戻ってきて言った。まだ状況を理解していないようだ。


「今日はもう閉めるんだって。海咲ヶ丘祭りの影響で」

「あー…そっかぁ。花音ちゃん海咲ヶ丘祭り知ってたんだね?」

「ううん!今聞いたんだよ」

「それで今から、みんなでお祭り行こって話してたんだよ!!」

「えっ…そうなの?」


花音の横から古都が顔を出して言った。まだ決まった訳ではないというのに。ユリは柊の顔を見た。


「まぁ去年行って今年行かない理由も無いしねぇ。皆が行きたいなら行こうかぁ」

「やったぁ!!ゆーきさん、行くよね?行くよね!?」

「水野さん、うるさい」

「それ行くって解釈で良い!?」

「…………」


歩はそっぽを向いてキッチンの中へと戻って行ってしまった。そんな様子も気にせずに古都ははしゃぎ続ける。そんな姿を見て花音は苦笑いする。


「古都ちゃんポジティブだよね?」

「えっそう?へへ、照れるなぁ」

「照れるとこかなぁ…」

「…まあ何だかんだ言うても、あの人なら来てくれるやろ」

「んー、とりあえず行けない人手挙げてくれる?」


柊はスタッフの顔を見渡しながら言った。行ける人、ではなく行けない人、と言う辺りが何とも彼らしい。余程の用事がない限り手を挙げづらいだろう。一同は顔を見合わせた。この場に居ないキッチンの二人を除いて、手はまだ挙がらない。


「やった!みんな行けるんだね!!」

「て言うかこの時間本来シフト入ってんだから、行けない人いないっしょ」

「渚さんの言う通ーり!はい、決まりッ」

「古都…」

「でも私も行ってみたいな。越してきたばっかりで存在すら知らなかったし」

「まぁ女性陣が行くって言うなら俺は何処へでも付いて行くけどなー」

「よし、じゃあ皆着替えておいで」

「はーい!」


柊の言葉に古都は全速力で更衣室へと向かう。その後から花音、拓真、渚が続く。嵐の後の静けさというやつだ。柊がふと目線を後ろへ移すと、立ち往生しているユリの姿が目に入った。どうかしたのだろうか。


「ユリちゃん、制服で祭りは浮くと思うよー。君が良いなら止めはしないけどね」


宣伝にもなるし。そう言ってにっこり笑う柊。


「い、いえ…!あの、ゆーきさんと藤崎さんは行かれるんですかぁ…?」

「歩くんは行くと思うよー。隼人くんは、どうだろうねぇ」

「そうですか…」

「来て欲しくないのかな?それとも逆?」

「えぇ!?そ、そんな来て欲しくないだなんて…!」

「じゃあ逆なんだね」

「えっと、えっと…!とりあえず着替えて来ますっ」


そう言うとユリは少し遅れて更衣室へと入って行った。途中で壁にぶつかっていたようだが大丈夫だろうか。柊はその様子を見てクスッと笑いを漏らした。






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ