ようこそラメールカフェ!

□忘れ物
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「あれ、ネクタイ…?」


平日の夕方、客足も減ってきたところで花音は休憩室へと足を踏み入れた。するとテーブルの上に赤いネクタイが置かれているのが目に入った。…誰の物だろう。花音は椅子に腰を掛けつつネクタイを手に取ってみた。あ、よく見ると裏に小さく校章のマークが入っている。学校指定のものであるようだ。えっと、今日シフトに入ってるのは…柊は大学生だから除くとして、ユリ、古都、拓真か。花音の高校は女子はリボン着用のため、ユリの物でもないだろう。第一うちの学校の校章ではないし。


「うーん、拓真くんのかな…?」

「花音っち!どうしたのその目隠し!!」

「きゃあ!?」


突然耳元へ聞こえてきた声に花音は思わず叫び声を上げる。振り向けば案の定と言うべきか、目を輝かせている古都の姿があった。扉開く音しなかったけれど、いつの間に現れたのだろうか。


「それ、うちへのプレゼントだったり!?」

「い、いや違う…」

「どないしたん花音ちゃん!」

「わわっ!拓真くん」

「ど、泥棒!?変質者!?」

「ユリちゃん…」


勢いよく開いた扉からは、先ほどの花音の叫び声を聞き駆けつけた拓真とユリが突入してきた。ユリは何故か手にフライパンを構えている。


「二人とも落ち着いて…古都ちゃんに驚かされただけだから…」

「へっ?古都に?」

「う、うん」

「泥棒は…?」

「だから居ないってば、ユリちゃん」

「な、なんだぁ…」

「古都!相変わらず人騒がせな奴や!」


その場にへたり込むユリと、古都を追いかけ回す拓真。ああ、今日のキッチン担当が柊で良かった。そうでなければきっと二次災害が起こっていた。花音は何度か目にしたことのあるキッチンダブルイライラモードデイを思い出し顔を引きつらせた。


「花音っちが悪いんだよぅ!うちの前に玩具を…!」

「黙れや」

「たっくんいひゃい」

「古都ちゃん、オモチャってー?」

「それそれ!その目隠し!」

「だーかーら!これはネクタイですっ!!」

「ネクヒャイ?」


古都は拓真に抓られた頬を擦りながら聞いた。わざと間違えているとしか思えないのだが。


「誰かの忘れ物みたいで。拓真くんと古都ちゃんのではない?」


そう言って花音は赤いネクタイを二人の前に差し出した。


「んー、俺のではないなぁ」

「何だネクタイかよぅ。興味ないねっ」

「あはは…二人のではないんだね」

「た、多分昨日入ってた人のじゃない…?」

「だね。となると限られてくるけど…ここに校章入ってるんだ」

「どれ、見してみ」


そう言うと拓真は花音からネクタイを受け取り、校章をチェックした。普通他校のものなど覚えているだろうか。


「こら海ヶ浦やな。間違いないわ」

「分かるんだ!?」

「おん、あそこの女の子べっぴんさんが多いからな」

「そういうこと…」

「さ、さすが拓真くんだねぇ」

「ま、海ヶ浦っちゅーことは持ち主は隼人さんかゆーきさんやな」

「たっくん貸して!!!」


言い終わるや否や拓真からネクタイをひったくる古都。拓真は予想通りの反応や、と苦笑いする。






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