Fate
□蛍の光
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「ほーほー、ほーたるこい!」
管理者の情報を頼りに森中を歩く生徒会一同。一応合宿所の敷地内なので、足場はそれほど悪くない。目的地は勿論、今の時期蛍が見られるという穴場スポットだ。しおりは先頭を歩きながら、気分よく童謡『ほたるこい』を歌っている。
「本当にこの道で合っているのか」
「多分!そうだよね織田っち?」
「ええ。そろそろですよ」
涼介が言うのなら正しいのだろう。俊二は自分より後ろを歩くメンバー達の様子を伺った。すぐ斜め後ろでは恵があくびをしながら歩いている。その後ろでは颯太と由衣の二人が何やら話をしており、その更に後方にはナツと和の姿がある。和と目が合ったが、ふいと逸らされてしまった。やはり予定外の蛍探索に機嫌を損ねている様子だ。まぁ仕方がない。ついて来ただけでも珍しいくらいだ。
「会長さま、前見て歩かないと転ぶっすよ!」
「…ああ。そんな失態はしないがな」
俊二は再び前を見て歩き始めた。
Story27.蛍の光
「この辺りですね」
涼介が地図を畳みながら言った。その言葉にメンバー達も足を止める。コテージ周辺に比べて風もなく、とても静かな空間だ。音と言えば、かすかに聞こえる川のせせらぎくらいか。
「こんなとこに蛍がいんのかぁ?」
「常に光ってる訳じゃないからね。少し待ってみた方が良いかも」
颯太が辺りを懐中電灯で照らしながら言った。
「そうだな。場所が合っているのなら、その内現れるだろう」
「というか、どういう時に光るんすかねー」
「危険を感じた時じゃね?要するにビビらせりゃ良いんだ」
「だ、駄目だよぉ恵」
「よし、ここはうちが呼び寄せるしかないようですなっ!」
そう言うとしおりは何やら鞄の中をガサゴソと漁り始めた。何を取り出そうというのか。彼女のすることなので、期待はできそうにないが。
「じゃじゃーん!」
「…ペットボトル?」
ナツが怪訝そうな顔で言った。確かに、どこからどう見てもペットボトルだ。中には少量の液体が入っているのが分かる。
「何が入ってんだ?水か?」
「ただの水じゃないっすよ!砂糖がたっぷり入った激甘水なのだ!」
誇らしげな表情で胸を張るしおり。その様子に涼介は、彼女が先ほどまで歌っていた童謡を思い出した。
「まさか、『ほたるこい』に倣って甘い水を用意した、なんて言いませんよね」
「わっ、大正解っす!」
「案の定かよ。ンなもんで蛍が寄ってくっか!」
「えー!?蛍の好物だよ!?」
「歌詞に出てくる甘い水に関しては諸説ありますが…そのような人工的な水に寄ってくるとは思えませんね」
「オーノー!!努力の結晶が…!」
そう言って肩を落とすしおり。どこからか「水に砂糖混ぜただけじゃん」と言う声が聞こえてきた。確かにその通りだ。その様子にメンバーは呆れたような表情を見せる。
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