Fate

□伝わる温度
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「午前中は自由行動だ。昼食後、合宿所付近の探索をする」



合宿二日目の朝。軽く朝食をとった後に俊二が言った。

彼の言葉を受け、メンバーは各々の時間を過ごし午後からの探索に備えていた。特に構える必要もないのだが、今日はどうやら遠出をするようだ。体力は無いよりあった方が当然良いだろう。


「男共は何時に起きてやがったんだ…?眠さなんか微塵も感じねーみたいな顔しやがって…」


恵は欠伸を噛み締めながら寝ぼけ声で言った。自由行動ならば寝ていたって誰も文句を言わないだろう。この眠気は昨夜遅くまでしおりの馬鹿に付き合っていたせいだ。
恵はそんなことを考えながらソファーにダイブした。


「んー…」

「こんな所で寝るな」

「いてっ!な、何すんだ!」


額に軽い痛みが走り、見上げるとやはりそこには天敵である俊二の姿があった。想像通りだ。
手にはしおりの作った旗が握られている。またかよ、それ好きだな。


「何ちゃらツアー号じゃねーか!んなガラクタで叩きやがって!」

「うるさい。共同で使用する物を占領するな。睡眠をとるなら寝室へ行け」

「そっちにも居るだろッいつも生徒会室のソファー陣取ってる奴が!」

「使用したいのならばその場で言えば良い。今の俺のようにな」

「んだと!?」


こいつの勝ち誇った顔は何故こんなにも腹が立つんだろうか。恵はそう思いながら俊二を睨みつけるも、本人は気にも留めていない様子だ。恵はもう一度舌打ちをした。






story25.伝わる温度






「織田っち、付き合ってくれてありがとね!」

「あなた一人を行かせると、何をしでかすか分かりませんから」

「失礼だなぁ!そこまで問題児じゃないっすよ!」

「…………」


その頃、しおりと涼介は冷蔵庫に入りきらなかった分のペットボトルを抱え、コテージの外を歩いていた。しおりの提案で、この付近にある川に飲み物を冷やしておくことになったのだ。一年の頃クラスメイトがその川で水遊びをしていたのをうっすらと覚えている。合宿所の敷地内であるため、特に危険もない。そのくらいなら問題無いだろうと思い、涼介も反対はしなかったのだ。


「あっ見えてきたー!」

「転んでも知りませんよ」


川が見えた瞬間、しおりは駆け出した。両手が塞がっているのだからやめた方が良い、そう言ったところでやめないのが彼女だ。涼介は呆れつつその姿を目で追った。


「織田っちも早く来てよー!冷たくて気持ちいいっすよー!」

「僕は良いです」

「えー!?ノリ悪いっすよー!」


しおりの姿に、涼介はうっすらだったはずの記憶の靄が取れた。一年前も、こうして同級生に誘われたんだ。


『織田も来いってー!気持ちいいぞー!』

『僕は良いです』

『ノリ悪いよなーお前!』


何がそんなに楽しいのだろう、そう思った。ただの水ではないか。川の水だから何だと言うんだ。水道水や水溜りには見向きもしないくせに、合宿所にある川だから。それだけの理由ではしゃいでいた同級生を、自分はどこかで見下していたんだ。






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