Fate
□分からない
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「これでどうっすか!?」
「辛い」
「柴ちゃんさっきからそればっかりだよー!!」
コテージとその周辺のチェックも終わり、一同は一息ついた後夕食作りに取り掛かっていた。本当は親睦合宿一日目と同じメニューであるパエリアを作りたかったのだが、バタバタしたため今日は簡単にできるカレーとサラダを作ることに決まったのだ。
「葉月さん。カズに頼っているととんでもなく甘口になりますよ」
「うぐっ、実感中…」
小皿にすくったカレーを口に含み、しおりは顔を歪める。
「甘ったりぃカレーなんて食えねーぞ!スパイス足せスパイス」
「お、おうよ!」
「ひど、最悪、あんぽんたん」
「カレー一つでそこまで言われるんすか!?」
和はしおりの台詞をスルーし、サラダ作りの方へ行ってしまった。だからといって手伝うとも思えないのだが。しおりは迷いながらももう少しだけスパイスを足そうと手を伸ばした。
「待った」
「ナツ?何すか?」
「彼の分だけこっちの鍋に移して、私達の分は味付けを変えればいい」
そう言って小さめの鍋を隣のコンロに置くナツ。あ、なるほど。
「さすがナツ、その手があったか!」
「…誰でも思いつく」
「これで誰にもボロクソ言われずに済むっす!」
「既にさっき言われてたけど」
しおりはナツの言葉を特に気にする様子もなく、ニコニコとカレーを移し始める。都合よく物事を忘れるものだから、本当に羨ましい性格だ。
「うちらが作ったにしては大分いい出来っすよね!」
「でもこのにんじん、切り方大きすぎないかなぁ…もう少し火通そうか?」
「あー…ごめん。それ俺」
そう言って颯太は申し訳なさそうに苦笑いする。そうだ、彼は細かい作業が苦手だと自分でもよく言っている。由衣は口元を押さえ、焦ったような表情になった。
「あ、別に苦情とかじゃなくてね?えっと、そう、ただの感想!」
「あはは、正直な感想ありがとう」
「わ、悪気ないからねっ!」
「もう食えりゃ良いって。こっちは腹減ってんだ。おい、サラダの方はどうなってんだよ?」
恵はサラダ作りを担当していた俊二らの方を向いて聞いた。男性陣のキッチンに立つ姿が新鮮過ぎて最初は噴き出していた彼女だが、もう落ち着いたらしい。
「とっくに完成している」
「んだよ、早く言えよ」
「美味しそう」
サラダの入っているボウルを覗き込む恵とナツ。色鮮やかな野菜がバランスよく並んでおり、作った人物の几帳面さが見て取れるようだ。恵は理不尽に舌打ちをする。
「このドレッシング手作り?」
「はい」
「本格的」
「カロリー、塩分、健康面を配慮して目分量ではなく一つ一つ…」
「じじくせぇこと言うな!どうせまたそのノートパソコンで調べたんだろ」
「悪いですか。そのおかげで完璧ですが」
「…ったく、デジタル人間…っつか機械人間だなてめーは」
涼介は「何か問題があるのか」と言いたげに、怪訝そうな顔をしながら首を捻った。恵は苛々しながらもう一度舌打ちをする。
「つまりだな、もっと自分で考えた答えを…」
「あのあのー!こっちも完成してるんすけどー!」
「…んだよ。まぁいい、腹減ったし」
恵は言いかけていた言葉を中断し、しおり達の方へと向かった。
腹が減っては戦はできぬ。今日はメンバー全員動きっぱなしで、疲れも溜まっているだろう。一先ず夕食をとって休戦しなければ、体が持たない。
Story23.分からない
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